アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所

【投資の基本と実践⑭】ゴールベースアプローチ

2026/06/05

前回のコラム(【投資の基本と実践⑬】資産配分を決める|未来をはぐくむ研究所)では、「資産配分(どの資産にどれくらい投資するか)」を考えました。その出発点は「目的(いつ、何のために使うお金か)」です。今回は、その目的(ライフイベント)と目標金額から資産形成・投資を組み立てる考え方である「ゴールベースアプローチ」を、もう少し具体的に整理します。

ゴールベースアプローチとは

「ゴールベースアプローチ(Goal-Based Approach)」とは、「人生のさまざまなライフイベントの目標金額(ゴール)」から逆算して、貯蓄や投資、そして資産配分を設計する考え方です。資産形成の基本的なフレームワークの一つといえます。たとえば、【図表1】のようにゴールを分けて考え、それぞれに合った資産形成方針を検討します。

【図表1】ゴールの例

  • 5年後に自家用車の購入資金 300万円
  • 10年後に住宅購入の頭金 800万円
  • 18年後に子供の大学入学・授業料準備 200万円
  • 65歳時点でセカンドライフの準備資金 2,000万円

ゴールベースアプローチで目指すのは、「ライフイベントに必要な目標金額からの逆算」に基づく、納得感のある貯蓄・投資です。投資を「何となく増やすため」ではなく、将来の具体的なゴールを実現するための手段と考えます。ここで特に重要なのは、次の3点です。

  • 資金使途(ライフイベント)
  • 目標金額
  • 達成までの期間

この3つの組み合わせによって、適切な資産配分(リスクの取り方)は変わります。

①資金使途(ライフイベント)と目標金額

資金使途(ライフイベント)が明確で、必要な金額が固まっているほど、資産形成の失敗が家計に与える影響は大きくなります。そのため、安全資産(預金・個人向け国債など)の比率を高めにするといった、慎重な設計が基本になります。

②達成期間

期間の長さによって、取れるリスクの幅が変わります。目安としては次の通りです。

短期〜中期(おおむね5年以内): 元本確保を重視(株式比率は抑えめ)
中長期(5〜20年程度): 期間が長いほど株式なども組み入れやすい
長期(20年以上): 株式の比率を比較的大きくすることも可能

※あくまで目安であり、「目標金額の確実性」「家計の余力」「途中で方針変更できるか」などで調整が必要です。

目標金額から逆算した想定運用利回りと積立金額

ゴールベースアプローチでは、目標金額から逆算して毎月の積立額や想定する運用利回りを決めていきます。計算は、当社の「資産運用かんたんシミュレーション」【図表2】のようなツールを使うと便利です。

ステップ1: 目標金額を決める
ステップ2: 積立期間(何年後に必要か)を決める(初期投資額がある場合は入力)
ステップ3: 想定する運用利回りを設定する

【図表2】資産運用かんたんシミュレーションの画面

【図表2】資産運用かんたんシミュレーションの画面

出所:アセットマネジメントOneウェブサイト

ここでポイントとなるのが、ステップ3(想定する運用利回り)です。運用利回りによって、必要な毎月の積立額は大きく変わります【図表3】。

【図表3】運用利回りの違いによる必要な積立額

目標金額 1,000万円
積立期間 20年間
運用利回り 2% 5%
必要な積立額(月額) 33,931円 24,543円

※上記は、実際に投資した場合の将来における投資成果等を保証するものではありません。

※税金や手数料等は考慮していません。

想定運用利回りを高くすると、毎月の積立額は小さく見えて魅力的です。ただし、高い利回りを狙うには、一般に株式など値動きの大きい資産の比率を高める必要があります。市場環境次第では、目標金額を大きく下回る可能性もあり、目標金額達成の確実性(達成確率)は下がりやすい点に注意が必要です。

ゴールベースアプローチの留意点

①想定運用利回りの設定に願望が入りやすい

シミュレーションをすると、利回りが高いほど必要積立額が小さくなるため、つい利回りを高めに置きたくなります。しかし、想定運用利回りと資産配分は表裏一体です。一般に、利回りを高く見積もるほどリスクも増えます。
想定運用利回りを控えめにする(=より確実性を重視する)場合は、主に次の選択肢になります。

  • 目標金額を下げる
  • 毎月の積立額を増やす
  • 積立期間を延ばす

どれが現実的かは、ライフイベントの重要度・確実性、期限(延ばせるか)、未達の場合の代替手段(家計で補えるか)などを踏まえて判断するのが大切です。

②「資産は増えれば増えるほど良い」という考え方との違い

ゴールベースアプローチには、「投資の目的は、資産を増やすことであって、増えれば増えるほど良い」という考え方から批判もあります。
ゴールベースアプローチは「目標金額達成が見えてきたら、リスクは回避する(不必要なリスクはとらない)」という考え方が基本にあるため、「常に資産の最大化を目指す投資」とは考え方が異なります。たとえば、住宅購入の頭金や子供の入学金・学費など金額と期限の見通しが立ちやすいゴールでは、「増やす」より「確実に準備する」ことが重要になるためゴールベースアプローチの方が合理的だと考えます。
また、ゴールが明確なほど、相場が悪い局面で心理的な負担が増え、判断が振れやすくなることもあります。だからこそ、最初に「どの程度の振れ(損益の上下)なら許容できるか」を通常の投資以上に現実的に見積もることが欠かせませんし、保守的な資産運用にもなります。

ゴールベースアプローチは、理論面だけを見ると「もっとリスクを取った方が効率的」と感じる場面があるかもしれません。しかし、人は「目的が明確な方が行動しやすい」という特性を持ちます。目的(ライフイベント)と目標金額から逆算して設計するこの方法は、続けやすく、家計の失敗を減らしやすいという意味で、堅実な資産形成にとって重要な考え方になります。

(執筆: 村井 幸博)

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