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【社会保険シリーズ】30代で知っておきたい社会保険

2024/09/27

結婚、出産、住宅購入とライフイベントが次々に訪れる30代は、保険についても関心が高まる年代だと思います。今回は30代の会社員が知っておきたい公的年金について取り上げたいと思います。

会社員の公的年金の概要

会社員の公的年金は、国民年金(基礎年金)と厚生年金保険の2階建てになっています。また、公的年金は、老齢、障害、死亡といった保険事故に対して給付が行われる「総合保険」であり、それぞれの保険事故について2階建ての給付が行われる仕組みになっています。
給付の考え方としては、1階部分の基礎年金は、老齢、障害の場合は被保険者個人に対する生活保障、死亡の場合は被保険者が養育している子に対する扶養手当という位置づけです。一方で、2階部分の厚生年金については、世帯の所得保障と捉えられています。そうした考え方に基づいて、各々の給付について家族構成に合わせて加給年金等の加算が行われるようになっています。

本シリーズの20代向けでは、年金額をざっくりと説明しましたが、30代の今回は、より詳細に解説していきます。
障害年金と遺族年金の年金額は、基本的に「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」がベースとなりますので、下表の老齢基礎年金と老齢厚生年金をご覧ください。
老齢基礎年金は40年(480月)のフルペンション減額方式といって、20歳から60歳までの40年間で未納となっている期間だけ満額から減らされるというものです。2024年度の年金額の改定率*は1.045となりますので、老齢基礎年金の年金額は満額で年額81.6万円(=780,900円×1.045×480月/480月)となっています。

*改定率とは、前年度の改定率を基準として、名目手取り賃金変動率や物価変動率に応じて毎年度決定されるものです。2024年度の改定率は、2023年度の改定率を名目手取り賃金変動率(+3.1%)とマクロ経済スライド調整率(▲0.4%)で調整した結果、1.045に決定されています。

逆に老齢厚生年金は、毎月の給料から厚生年金保険料が控除され、いくら保険料を払ったかによって年金額が決まってきます。例えば、ボーナスも合わせた年収から計算した月額を再評価した額が50万円で、40年間納付した場合の年金額は年額約131万円(=50万円×5.481/1000×480月)となります。

【 公的年金の給付の概要 】

公的年金の給付の概要

前述したように、30代はライフイベントが多くあるため、生命保険等の加入を検討する人が多いと思いますので、公的年金の障害年金と遺族年金について詳しく解説していきます。

会社員の障害年金

まず、障害基礎年金は、被保険者であるときに障害等級1級か2級の障害を負った場合に老齢基礎年金の満額(2級)か満額の1.25倍の額(1級)が支給されるものです。
また、障害厚生年金は、被保険者であるときに障害等級1~3級の障害を負った時に、老齢厚生年金の額(2~3級)か1.25倍の額(1級)が支給されます。障害等級が3級に満たない場合は障害手当金が一時金として支給されます。

65歳未満の配偶者がいる場合は障害厚生年金に年間で約23万円が加算され、18歳の年度末までの子がいる場合は障害基礎年金に年間で約23万円(2人目までの子1人当たり)が加算されます。
障害厚生年金には、会社員になってすぐに障害を負った場合などに極端に少額とならないように、被保険者期間を最低でも25年(300月)とみなす措置があります。

なお、障害等級1級というのはどれくらいの障害かというと、ベッドのある部屋から自力では出ることのできないような障害、2級は自宅から自由に出ることができないような障害のイメージです。

【 障害年金の概要 】

障害年金の概要

次に、被保険者が死亡した時にその家族に支給される遺族年金について見てみましょう。

会社員の遺族年金

遺族基礎年金は、養育している18歳の年度末以前の子がいる場合に、その子か配偶者に支給されます。一方で、遺族厚生年金は、生計を維持している配偶者、子、父母、孫、祖父母に支給されます。(子と孫は18歳の年度末まで支給、30歳未満の子のない妻は5年間の有期年金が支給、夫と父母、祖父母は55歳以上が対象で60歳から支給されます。)

遺族基礎年金には年間で約23万円(2人目までの子1人当たり)の子の加算があり、子のいない40歳以上65歳未満の妻の遺族厚生年金には、遺族基礎年金の4分の3の額の中高齢寡婦加算が加算されます。
遺族基礎年金の年金額は老齢基礎年金の満額です。遺族厚生年金は老齢厚生年金の4分の3で、障害厚生年金と同様に被保険者の被保険者期間を最低でも25年(300月)にみなす措置があります。

なお、遺族厚生年金は男女による差別的な取り扱いを解消するという目的で、60歳未満については5年間の有期年金とする案が検討されています。

【 遺族年金の概要 】

遺族年金の概要

いかがでしたでしょうか?
公的年金が障害や死亡についてもカバーしている「総合保険」だということをご存じない方も多くいらっしゃるようです。公的年金がイザという時に、どれくらい保障してくれるのかを理解しておくことで、資産形成のための資金の確保につなげて頂きたいと筆者は考えています。

(執筆 : 花村 泰廣)

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