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ふるさと納税が2023年10月から改正!なぜ改悪と言われている?

2023/11/17

知恵のハコ

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生まれ育ったふるさとや、応援したい自治体を自由に選んで寄付をすることで、様々な返礼品を受け取ることができる「ふるさと納税」制度。その利用者は開始以降年々増加しており、2022年度には過去最高の約9,654億円もの規模となっています。魅力的な返礼品で人気を集めてきたふるさと納税ですが、2023年10月に制度変更があったことをご存じでしょうか。この変更は改悪と言われることもありますが、それはいったいなぜなのか。本記事ではそもそもの仕組みから制度改正の内容までわかりやすく解説します。

ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税は、「納税」という名前がついていますが、実際には都道府県・市区町村への「寄付」の仕組みです。背景には、地域から都市部への人口の流出による都市・地域間の税収格差などの社会問題があり、これらを是正するための施策として開始されました。
よく「2,000円の自己負担で様々な返礼品が受け取れる」といわれていますが、その仕組みは、利用者が自治体に寄付した金額のうち2,000円を除いた金額が本人の所得税・住民税から控除され、代わりに自治体からの返礼が贈られる、というものです。例えば50,000円の寄付をした場合、自己負担の2,000円を引いた48,000円が所得税・住民税から差し引かれることになります。

ふるさと納税の仕組み

出所:総務省HPより抜粋

注意が必要なのは、自己負担が2,000円で済む寄付金の上限額は、利用者の所得水準や扶養状況などによって異なるということです。総務省HPや、各種ふるさと納税サイトのシミュレーションツールなどを使用し、ご自身の寄付金上限額をチェックしておきましょう。

また通常、ふるさと納税の税額控除を受けるには確定申告をすることが必要ですが、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をすることなく郵送やWEBでの手続きをすることで税額控除を受けることができます。しかし、寄付先が5団体を超えてしまうなどの除外要件に該当すると確定申告が必要になるため注意しましょう。

ふるさと納税の変遷

ふるさと納税は、2008年の開始から現在に至るまでにいくつかの制度改正が実施されました。 制度に大きな変更があったのは2015年です。自己負担を除き全額控除される上限金額が、それまでの約2倍に拡充されました。また、前述した「ワンストップ特例制度」が始まったのも同じ年です。これらの改正によりふるさと納税はより利用しやすく価値のあるものになり、2014年度に約388億円だった納税額は、2015年度には4倍以上の約1,652億円まで増加しました。

一方で返礼品に関しては2019年、自治体に対し①返礼品の返礼割合(寄付金に対する返礼品の調達経費の比率)を3割以下とすること、②返礼品を地場産品とすることが課されることになりました。返礼品の送付について、自治体が寄付に対する返礼品としてその地域の特産物などを送ることが一般的ですが、当時は一部自治体がより多くの寄付を集めるために商品券や高価な電子機器などを送付するケースが増え、「ふるさと納税」の本来の趣旨に反しているという問題提起がなされたことがきっかけです。結果として2017年・2018年には、寄付額に対して返礼割合が過度に高い返礼品を送ることや、商品券などの金銭類似性の高い返礼品を送付する行為を控えるよう、総務大臣より要請が下り、2019年に上記の改正に至りました。

2023年10月から何が変わった?

2023年10月から何が変わった?

冒頭で触れた通り、今年の10月には新たな改正が実施されました。利用者にとって「改悪」とも言われた今回の措置ですが、その理由ともいえる大きな変更は主に2点です。

経費率の計算に含める対象経費の拡大

ふるさと納税制度においては、自治体は返礼品の調達や送料、仲介サイトに支払う手数料などの経費について、寄付金額の5割以下に抑えることが求められています。経費率が高いということはその分自治体に残るお金が少なくなるということであり、ふるさと納税制度の趣旨に反するためです。
今回の改正においては、経費の算出に当たって今まで対象とされていなかった、ワンストップ特例制度の事務や寄付金受領証の発行にかかる費用を含めなければならなくなりました。このことで経費率が5割を超えてしまう自治体はそのままだと制度の対象外とされてしまうため、経費率の分母に当たる寄付金額の値上げに踏み切るケースが増えています。つまり、同じ返礼品でも寄付金額が上がったり、同じ寄付金額でも返礼品のグレードが下がったりするということです。

地場産品基準の厳格化

返礼品の中でも人気が高いのが熟成肉や精米です。従来は、自治体の属する区域外で生産されたものであっても、熟成や精米などの加工地が自治体の属する区域であれば地場産品として認められてきました。しかしながら今回の改正では、熟成肉・精米について地場産品として認められるのは、自治体の属する都道府県で生産されるものに限られるとされました。他にも、地場産品と認められる「加工その他の工程」の定義がより詳細に提示されたことで、いままで受け取ることのできた一部の返礼品が対象外となってしまう事例が生じています。

おわりに

ここまで見てきた通り、今回の改正は利用者にとって必ずしも歓迎される内容ではないかもしれません。しかしながら、ふるさと納税の本来の目的は人口減少地域に対する支援であり、自治体がやるべきことは地方の魅力をアピールすることであるはずです。返礼品の自治体間競争が過熱することで自治体に残る金額が少なくなってしまったり、自治体に縁のない返礼品ばかりが人気を集めていては、本来の目的を達成することはできないでしょう。今回の改正は利用者にとっても自治体にとっても、ふるさと納税の本来の目的について見直すきっかけになるかもしれません。

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