【投資の基本と実践②】投資でお金を増やす
2025/06/06

今回は「投資でお金を増やす」基本について考えます。多くの人にとって投資の目的はお金を増やすことだと思いますが、その考え方は人によって様々です。基本的な考え方が整理できると、投資はそれに対応したものになります。
「投資でお金を増やす」3つの考え方
「投資でお金を増やす」といった場合、大きく次の3つの考え方があります。
- ①将来の金融経済動向などを予想し、その予想が当たってお金を増やす
- ②短期の価格変動を当ててお金を増やす
- ③世界経済の成長の果実を享受して、お金を増やす
投資のイメージを①と考えている人が多いと思います。経済・景気動向や企業業績などを予想してそれに基づいて投資し、想定どおりの結果になれば利益を獲得できるというものです。プロの投資家はこれを目指します。しかし、この投資は決してやさしいことではありません。例えば、A社の現在の株価を考えます。現在の株価は、これから株価が上昇する(=株を購入する)と考えている人と下落する(=株を売却する)と考えている人の均衡点(将来予想の平均的な見方)です。この価格は、市場を通じてプロもアマチュアも入り混じって形成されるので、その均衡点から将来どのように価格が変動していくか予想するのは難しいのです。価格は「上がる」か「下がる」かなので、予想をすることは簡単ですが、その結果お金が増えるかどうかは「再現性のあるノウハウ」次第になります。「再現性」がないと単なるまぐれ当たりです。プロは「再現性のあるノウハウ」獲得に向け努力していますが、成功者は限られます。
また、②のように短期の価格変動を当ててお金を増やそうとする(偶然の要素が大きなものは「投機」と言います)人もいます。これは、①のケースよりもさらに予想が難しくなり、偶然の産物(≒ギャンブル)にも近くなります。このような投資(投機)も本来個人の自由ですし、再現性の高い専門的なノウハウがあれば問題ありません。ただ、一般的には短期の価格変動を冷静に判断して対応するのは難しく、欲が前面に出た感情的な投資判断になりがちです。さらに短期売買では通常手数料や税金、その他のコストがかさむため、損をする確率も高まります。プロの場合は、取引所と同じデータセンターに発注用機器等を設置することができるサービスを利用して高速度短期売買をする方法も普及しており、個人の投資家が短期売買で儲けるチャンスは少なくなっています。また、投機的な短期売買の継続はギャンブル依存症のリスクもあります。
世界経済が成長するから投資でお金が増える
筆者は投資の基本は③だと考えています。世界株式などに連動する投資信託に投資する人が増えていますが、その基本的な考え方です。個別の国の場合はその国の事情により必ずしも成長するとは言えないのですが、世界経済全体では歴史的に成長してきています。短期的にいろいろな出来事があっても長期的には成長が継続し、その結果投資でお金が増えると考えられます。現在は経済のグローバル化が進展し、世界の株式市場に投資できるインフラ・商品が整い、かつ低コストで投資できるようになりました。世界経済が成長すれば、その成長をけん引している主要企業の業績も通常好調なので、株価は上昇し、投資でお金が増えることになります。また、日本の主要企業の海外売上比率が大きくなり(2024年度のトヨタの海外売上比率は約85%)、世界の株式市場における日本の割合も5%程度(2025年3月末のMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスにおける日本株の割合)と小さくなっています。
ただし、これはあくまで長期的な話で、常に世界経済の成長と株価が連動しているのではありません。コロナ禍やトランプ関税でもわかるとおり、いろいろな出来事が発生してマーケットは短期的に大きく変動するからです。
資産価値を保全する(資産をインフレに連動させる)
「お金を増やす」が投資の積極的な理由だとすると、「資産をインフレに連動させる(資産価値を保全する)」は生活防衛のための投資の理由になります。インフレはモノ・サービスなどの価格が上昇することです。ここ数年で日本でもインフレが実感できる環境になりました(「失われた30年」と言われるデフレ気味の経済の期間、物価はそれほど上昇しなかったため、インフレに連動する資産のニーズはあまり意識されませんでした)。一般的に世界の政府・中央銀行はインフレ的な経済(≒成長する経済)をめざします(現在の日本銀行の金融政策の目標は、消費者物価の前年比上昇率2%です)。その前提ではインフレに連動する資産を保有しないと金融資産は目減りをします【下図参照】。
毎年2%ずつ10年間モノの値段が上昇 vs 100万円の現金を預金(金利0.2%が継続)で運用
※上記はアセットマネジメントOneによる試算であり、実際に投資した場合の将来における投資成果等を保障するものではありません。
預金は少しインフレに連動しますが、基本的にインフレ率を大きく下回る金融商品です。また、公的年金もインフレに連動する仕組みはあるのですが、インフレ率を下回る仕組み(マクロ経済スライド)が導入されているため、当分の間インフレに割負けする構造です。インフレに連動する資産は、一般的には株式、外貨建て資産、金、不動産など(仮想通貨をインフレ連動資産と考えるかどうかは論者によって見解は分かれます)と言われます。長期的なインフレへの対応を考えれば、当然投資も長期になります。ただ、インフレの発生原因や経済構造の変化で、インフレに連動する資産は異なるのでバランスや見直しも必要ですし、手数料や税金、換金可能性などを考慮する必要があります。また、インフレに連動する資産は日々変動しているので、損失の可能性がある点も理解してください。ただ、投資をインフレに対する保険と考えると、「お金を増やす」目的で投資したにもかかわらず損失が発生する局面があっても、少し後悔が軽減されるかもしれません(筆者の経験ですと、損失の言い訳があった方が落ち着いて投資ができるようです)。
次回は、「お金を増やす」と表裏一体の関係にある「リスクをとる」ことについて解説したいと思います。
(執筆: 村井 幸博)