【知っておきたい!金融リテラシー③】
30代は住宅問題
2024/07/23
30代は、今後のライフプランを検討するにあたって、数多くの重要なイベントが起こる時期です。その中でも住宅問題は、一生の資産形成に関わる重要な決定になるでしょう。
なぜ、30代で住宅を考えるべきか?
30代で住宅を考える最大の理由は、リタイアまでに住宅ローンを完済することが望ましいという点にあります。住宅ローンの返済期間は、分譲戸建住宅で約33年、分譲集合住宅で約30年が平均的です(国土交通省の令和4年度住宅市場動向調査)。70歳での退職を前提に完済を目指すと、30代で住宅ローンを組む必要が生じます。もちろんリタイア後も住宅ローン返済を続ける選択、親子リレーローンなどの選択もありますが、その分老後資金計画が厳しくなります。
なお、60代の住宅ローン残高の平均は733万円です(金融広報中央委員会「令和5年度家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」)。住宅購入前の賃料負担なども考えると、早めの決断が望ましいとされますが、将来の不確定要素を考えると簡単な決断ではありません。
「賃貸」と「持ち家」の比較
まず、決断を迫られるのが、賃貸か持ち家かの問題です。以下にそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
賃貸 |
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持ち家 |
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選択は個人の価値観次第ですが、賃貸の場合、リタイア時に将来の賃料相当の資金確保が別途必要となることは注意してください。たとえば、月10万円の賃料を支払うと仮定すると、25年で3,000万円が必要になります。ライフスタイル、個人の状況、市況、金利などを考慮して、長期的かつ多角的に考察する必要があります。しかし、検討が難しいからといって先送りにするのもリスクが伴います。
「持ち家」という資産形成
資産形成の観点で「持ち家」を選択した場合、以下の特徴があります。
- ・持ち家取得による老後の住宅コスト軽減が、老後資金・年金と同等の役割を果たす
- ・持ち家取得は、住宅ローン返済義務による半強制的な資産形成の仕組みになっている
- ・住宅ローン減税のような制度的な優遇策を受けられる
- ・住宅ローン金利の影響で取得に必要な総支払額が変わる
国では戦後から持ち家促進政策を一貫して推進しており、その結果、60歳以上の世帯における持ち家の割合は約8割と安定しています。これは結果として老後資金の資産形成の基盤として機能しています。どのような住宅を選ぶかは生涯のマネープランに大きく影響します。早めの計画的な準備・検討が推奨されます。
(執筆 村井幸博)