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いまさら聞けない「FTA(自由貿易協定)」ってなに?

2018/11/02

知恵のハコ

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はじめに

米国第一主義を唱えるトランプ大統領は、NAFTA(北米自由貿易協定)によって拡大した貿易赤字や雇用減少の改善を目的に、就任前からNAFTAの再交渉を掲げてきました。そのため、NAFTAという言葉をテレビや新聞などの報道で見聞きすることも多かったのではないでしょうか。今回は、FTA(自由貿易協定)とは何かをご説明いたします。

戦後の自由貿易体制

1930年代の不況後、世界経済のブロック化に伴い、各国が保護主義的貿易政策を設けたことが第二次世界大戦の一因となったという反省から、1947年にGATT(関税及び貿易に関する一般協定)が作成され、1948年にGATT体制が発足しました(日本は1955年に加入)。貿易における無差別原則(最恵国待遇,内国民待遇)等の基本的ルールを規定したGATTは、多角的貿易体制の基礎を築き、貿易の自由化の促進を通じて日本経済を含む世界経済の成長に貢献してきました。GATT体制は国際機関ではなく、暫定的な組織として運営されてきましたが、1986年に開始されたウルグアイ・ラウンド交渉において、貿易ルールの大幅な拡充が行われるとともに,これらを運営するため、より強固な基盤をもつ国際機関を設立する必要性が強く認識されるようになったことから、1994年のウルグアイ・ラウンド交渉の妥結の際にWTO(世界貿易機関)の設立が合意されました。

WTO(世界貿易機関)の発足

WTOはGATTの精神を引き継ぎつつ、紛争処理機能などを強化した正式な国際機関として1995年に発足しました。本部はスイス・ジュネーブにあり、164ヵ国・地域が加盟しています(2018年10月現在)。WTOは各国が自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを決め、貿易障壁を削減・撤廃するため、加盟国間で貿易交渉を行っています。WTO の意思決定は、ラウンドと呼ばれる多角的交渉のため、参加国の全員一致を原則としています。交渉においては、当事国がお互いに譲歩することにより、すべての国が何らかの利益を得て満足することが成功の条件となります。しかし、加盟国が増えるにつれて先進国と新興国の利害対立が激しくなり、世界全体でのルール作りは難航しています。このため、FTA、EPA(経済連携協定)を例外的に認め、特定の国や地域の間で貿易を推進することになりました。

FTA(自由貿易協定)と EPA(経済連携協定)の違いとは

FTAは、特定の国・地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになり、消費者にとって相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。FTAは関税の撤廃・削減を定めますが、EPAは関税だけでなく知的財産の保護や投資ルールの整備なども含めるといった違いがあります。

EPA(経済連携協定)

日本の自由貿易の歩み

1990年代に入り、新興国が台頭すると先進国との利害対立が激しくなり、WTOの交渉が停滞したことから、二国間あるいは地域におけるFTAが世界中で積極的に締結されるようになりました。日本はWTOを中心とする多国間貿易体制に軸を置いてきましたが、他国が続々とFTAを締結するなか、貿易自由化を図るうえで、FTAの推進も重要であるとのスタンスに転換しました。日本は、2001年1月に既に積極的なFTA推進路線を取り始めていたシンガポールとのEPA交渉を開始し、2002年11月に日本にとって初めてのEPAが発効しました。これを弾みとして、日本は一気にEPA戦略を推し進めることになりました。その後、日本はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉にも参加し、2016年2月に交渉12カ国で署名に至りました。2017年1月に米国トランプ大統領が「離脱」を宣言したことで、早期の発効が難しい状況に陥りましたが、ここに来て参加国の国内手続きが進んだため、米国を除くTPP参加11カ国の協定「TPP11」が12月30日に発効することになりました。

日本のEPAの現状  (2018年8月現在)
発効済・署名済▶18
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12(署名済)、TPP11(署名済)、日EU・EPA(署名済)

最後に

日米両国は、9月26日にTAG(日米物品貿易協定)について交渉を開始することで合意しました。合わせて農産品については、TPPで合意した以上の譲歩には応じないこと、交渉中は輸入自動車への追加関税措置を発動しないことで合意しました。しかし、10月13日にムニューシン米財務長官が今後の通商協議で、日本にも通貨安誘導を防ぐための為替条項を求めていく意向を示すなど、楽観できる状況にはありません。また、交渉が進展するにつれて、米政権が望む「事実上のFTA交渉」に発展する可能性が高く、協議の行方が注目されます。

出所:JETRO、外務省、経済産業省の情報をもとにアセットマネジメントOne作成

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