アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所

【特別寄稿】
なぜ、今、「資産運用立国」なのか ①

2024/03/22

日本銀行の金融政策との絡みもあり、賃金上昇の成否が注目を集めている。確かに、過去30年間、日本の賃金は横這いが続いており、換算為替レートの問題もあるのであろうが、日本の平均賃金はOECD加盟国平均を大きく下回り、2010年代半ばには韓国にも抜かれている。※1
しかしながら、問題は賃金だけではない。金融資産所得を取ってみても、米国では、家計の勤労所得に対する金融資産所得の比率は右肩上がりで上昇し、2020年時点で3分の1となっているのに対し、日本は10分の1のまま横這いが続いている。※2
つまり、賃金が上がらない中で一生懸命消費を節約し、その切り詰めて作った貯蓄を、老後のために金利のつかない銀行預金に預けているという日本の家計の姿を表しているのではないだろうか。これでは、生活の豊かさを実感できないのも無理はない。

こうした背景の下、政府は一昨年「資産所得倍増プラン」を策定し、それに引き続き「資産運用立国実現プラン」を昨年取りまとめた。
今回のこうした一連の政策は、その対象範囲の広さ、大胆さ、更には金融サービス提供者側の施策のみならず顧客視点の施策も多く含まれるなど、極めて総合的かつユニークな抜本的な対策となっている。
「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、種々の施策が取られるようになって久しい。今回の資産運用立国を目指した政策が、今度こそ決定打となることが期待される。

(執筆 : 森田 宗男)

※1 出所:OECD Stat「Average annual wages」

※2 出所:内閣府、U.S. Bureau of Economic Analysis資料よりアセットマネジメントOne作成

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