新NISA、いつから始める? 今始めるべき理由と メリットや活用法を解説

2024年1月に始まった新NISA。メディアでも名前をよく聞くようになりました。しかし、いつから始めればよいのか、タイミングに迷っている方も少なくないようです。
この記事では、新NISAをいつから始めるか迷っている方に向け、早く始めるメリットや新NISAの活用法を解説します。

- ●新NISAとは?まずは基礎をおさらい
- ●新NISAを始めるタイミングはいつがいい?
- ●新NISAを早めに始めるメリットとは
- ・長期投資によって複利効果が期待できる
- ・ライフイベントに合わせた資産形成ができる
- ●新NISAを活用したシミュレーションのご紹介
- ・【シミュレーション1:毎月3万円を積立投資】
- ・【シミュレーション2:65歳時の目標金額2,000万円】
- ●【年代別】今から始めるなら?新NISA活用法
- ・【20~30代】少額でもOK!試しに始めてみる
- ・【40~50代】つみたて投資枠と成長投資枠をうまく活用する
- ・【60代以降】非課税保有限度額を最大限活用する
- ●新NISAを始めるときに押さえておきたいポイント
- ・基本は「長期・積立・分散投資」
- ・目標を定めて投資する
- ・無理のない投資を心がける
- ・情報収集を積極的に行い、専門家への相談も検討する
- ●新NISAを始める際のよくある不安点と解決策
- ・投資をしたことがない
- ・投資する資金が少ない
- ・投資は損をしそうで怖い
- ●まとめ
新NISAとは?まずは基礎をおさらい
新NISAとは、一定の条件を満たした投資信託や上場株式など特定の金融商品に投資をして利益を得られたときに、その利益に対して税金がかからない制度です。
個人投資家の場合、売却益や分配金(配当金)などの投資で得られる利益には、本来20.315%の税金がかかります(2024年3月末時点)。しかし、NISA口座を利用して投資をした場合、利益部分に対して税金がかかりません。
例えば、投資信託の分配金として1万円支払われる場合、その全額が利益に該当するなら本来であれば約2,000円の税金がかかるため、実質的な受取額は8,000円足らずです。しかし、新NISAを利用した場合にはそのまま1万円を受け取ることができます。
新NISAでは非課税保有期間が無期限となり、非課税保有限度額の中で枠の再利用も可能になりました。新NISAを利用して投資対象である金融商品に投資をしているかぎり、税制優遇は回数や年数には制限なく一生涯にわたって続きます。
また、新NISAにおける年間投資枠は、「つみたて投資枠」が120万円、「成長投資枠」が240万円となっています。生涯を通した非課税保有限度額は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)です。このため、長く投資を続けて1,800万円まで投資金額を積み上げるほど、非課税メリットが大きくなる傾向にあります。
なお、新NISAの詳細については「【2024年改正】新NISAとは?変更点と今すべきことをわかりやすく解説」の記事で解説しています。
新NISAを始めるタイミングはいつがいい?
結論からいうと、新NISAはいつ始めても構いませんが、投資の基本原則としてできるだけ早いタイミングで始めることでより長期の投資が可能になり、資産形成をするうえでさまざまなメリットが得られます。
なお、新NISAは非課税で投資ができる制度ではあるものの、NISA口座を開設したからといってすぐに投資を始める必要はありません。
NISA口座の開設は、金融機関によって異なりますが、一般的に1~3週間程度の期間を要するため、投資を検討する段階で口座開設を先行して進めてしてしまうのも一つの手でしょう。そうすることで、投資したい商品が見つかったときにすぐに非課税で購入ができるようになります。
新NISAを早めに始めるメリットとは
ではなぜ早くから新NISAで投資を始めるのがよいか、メリットについて具体的に確認していきましょう。
長期投資によって複利効果が期待できる
一般的には、投資期間は長期になるほど投資先の資産が収益を積み上げる期間も長くなることから、元本割れする可能性を低くする効果が期待できます。
また、投資で利益が得られた場合、その利益を再投資することで利益が利益を生む複利効果が得られます。複利効果も投資期間が長期になるほど高まる傾向にあります。
そして、複利効果によって利益が増加すれば、その分だけ非課税投資による節税効果も高まります。
つまり、できるだけ早く新NISAで投資を始めることで、こうした長期投資や節税効果の恩恵を受けることが期待できるのです。
また、長期投資のメリットを理解して投資を行えば、短期的な価格変動に惑わされにくくなることもポイントです。落ち着いて投資を続けることで、着実な資産形成ができるようになるでしょう。
ライフイベントに合わせた資産形成ができる
子どもの進学資金や住宅ローンの頭金、リフォーム費用などのライフイベントにかかる費用は、必要になる時期が分かってからでは十分な投資期間が確保できない場合があります。このため、まだ確定していない段階から早めに投資しておき、むしろ必要になる時期が決まったら、それに向けて現金化をしていくのが手堅い方法と考えられます。
新NISAでは、非課税投資枠の再利用が可能です。まとまった資金が必要になったときに新NISAで保有している金融商品を売却しても、翌年以降にその空いた金額分の非課税投資ができます。
このように、早くに投資を始めたとしても、売却・再購入を繰り返しながらライフイベントに合わせた資産形成ができることも、新NISAのメリットです。
新NISAを活用したシミュレーションのご紹介
それでは、新NISAを早く始めるメリットを確認するため、「65歳で資産はいくらになるか」、「65歳で目標金額を達成するために毎月いくら投資する必要があるか」という2つのパターンでシミュレーションしてみます。なお、想定投資利回りは5%とします。
【シミュレーション1:毎月3万円を積立投資】
35歳開始 (投資期間30年) |
45歳開始 (投資期間20年) |
55歳開始 (投資期間10年) |
|
---|---|---|---|
投資成果 | 2,497万円 | 1,233万円 | 466万円 |
(投資元本) | 1,080万円 | 720万円 | 360万円 |
(利益) | 1,417万円 | 513万円 | 106万円 |
※投資成果および利益は1万円未満を四捨五入しています。
年率5%の投資利回り、毎月3万円の積立投資を前提とした場合、35歳から始めれば65歳到達時の投資成果(時価評価額(=投資元本+利益))は2,497万円になります。45歳開始では1,233万円、55歳開始では466万円と、投資開始が遅いほど投資成果は小さくなります。
一見、投資期間が長ければその分投資元本も大きくなるため、当たり前と思うかもしれません。しかし、注目すべきは利益です。上の表から、利益は投資元本以上に差がついていることが確認できます。
実際には、一定の利回りで投資できることの方が珍しいため、これほど単純な話ではありません。しかし、早く新NISAを始めてできるだけ長い投資期間を確保することで、複利効果や節税効果が高まることを実感してもらえたのではないかと思います。
【シミュレーション2:65歳時の目標金額2,000万円】
35歳開始 (投資期間30年) |
45歳開始 (投資期間20年) |
55歳開始 (投資期間10年) |
|
---|---|---|---|
毎月投資金額 | 2.5万円 | 4.9万円 | 12.9万円 |
合計投資金額 | 900万円 | 1,176万円 | 1,548万円 |
※毎月投資金額は千円未満を切り上げています。
こちらは、年率5%の投資利回りで65歳時に2,000万円の達成を前提とした場合のシミュレーションです。
35歳から始めた場合、65歳で2,000万円を達成するための毎月の積立額は2.5万円になります。一方、45歳開始では4.9万円、55歳開始だと12.9万円を積み立てなければなりません。上の表から合計投資金額についても35歳開始が最も少なく、55歳開始が最も大きいことが分かります。
このように、なるべく早く始めることによって、より無理のない積立額で目標を目指すことができるのです。
新NISAのシミュレーションについては「新NISAで資産はいくらに?シミュレーションで利回り・金額・期間別に解説」の記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
【年代別】今から始めるなら?新NISA活用法
新NISAを活用して効率的な資産形成ができるように、年代別の活用例を紹介します。
【20~30代】少額でもOK!試しに始めてみる
現在20~30代の方は、今から新NISAを始めることで65歳になるまで25~45年間という非常に長い投資期間を確保できます。その分、より大きな複利効果が期待でき、少額であっても新NISAで投資を行う意義は大きいといえます。
さらに、投資を実際に経験し世の中の動きに触れることで、経済やビジネス、企業に関するさまざまな知識も身に付きます。投資をしながら「なぜこのニュースが株価に影響するのか」「なぜ為替が大きく動いたのか」などに注目することで知見が深まり、仕事にも役立つでしょう。
一方で、若い時期はまとまった資金がない、自己研鑽などキャリアアップにつながることにお金や時間を使いたいなどの事情があるかもしれません。これらを踏まえて、無理なく続けていける金額を設定するのがおすすめです。また、新NISAについては商品性がシンプルなインデックスファンドが中心のつみたて投資枠を利用すると、商品選びが比較的楽になると思います。
このように、投資のハードルを下げる工夫をしながら、まずは「新NISAで積立投資をする」という仕組み作りをしておくことがポイントです。
【40~50代】つみたて投資枠と成長投資枠をうまく活用する
40~50代は、老後資金の準備を意識し始める方も多いと思います。今から新NISAを始める方は、自分が何歳まで働くのかもある程度想定した上で、資産の取崩し時期に入るまでの期間を踏まえながら、リスクを意識した投資を心がけましょう。
特に子どもがいる場合は、進学などのタイミングに合わせて投資資産を売却する必要に迫られることも考えられます。教育資金が必要になるタイミングを前もって把握しておき、早めにリスクの低い商品に乗り換えることも検討しましょう。つみたて投資枠を利用すると乗り換え先の商品選びが比較的楽になるのは同様ですが、相応にまとまった金額で乗り換える場合、つみたて投資枠は年間投資枠が120万円しかなく、投資方法も積立投資に縛られることから不便が生じる可能性もあります。こうした不便は成長投資枠を利用することで解消できる可能性があることを覚えておきましょう。
一方、子どもがいない場合は、教育資金を用意する必要がない分、比較的お金にゆとりがあるかもしれません。しかし、その状況に甘えて、あればあるだけ使ってしまうような生活をすると、将来収入が減った時、生活水準を落とさなければなりません。収入が増えたら、その一部だけでもいいので投資金額を増額することを検討してみてください。「ボーナスが増えた分だけ上乗せする」など継続的に投資額を増額しないのであれば、成長投資枠の利用が適しています。
資産取崩し時期に入ると、保有資産の中で株式ファンドの構成比率が高いなど積極的にリスクをとっていた場合には、リスクを落とす必要性が高くなると思われます。そういったことも理解し、つみたて投資枠と成長投資枠を上手く活用しながら投資経験を積みましょう。
【60代以降】非課税保有限度額を最大限活用する
60代以降の方でも、新NISAは生涯にわたって投資を続けられますので十分活用が可能です。ただし、いかに資産を増やすかではなく、いかに資産寿命を延ばすかがより重要なポイントになると思われます。必要に応じて取り崩すことを前提にしながら、新NISAを活用しましょう、
この時期になると、子どもが独立し、住宅ローンも返済し終えて家計に余裕が生まれるケースが考えられます。退職金など、まとまった資金があるのであれば、新NISAの非課税保有限度額1,800万円まで投資することも視野に入ります。最短では、年間投資枠の360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)を5年間投資する計算です。介護や入院などの万が一のための資金や、住宅リフォームや子どもの結婚などの老後のライフイベントのための資金を考慮しながら、資産寿命を延ばすための投資を検討してみましょう。
商品選びの際は、何よりもリスクを抑えることを重視しましょう。投資金額が大きいと少し利回りが改善するだけで金額的に大きな効果が得られる一方で、投資に失敗すると大きな含み損を抱えながら資産を取り崩さなければならないためです。投資先としては、債券ファンドや債券比率の高いバランスファンドなどが候補の一つになると考えられます。
もちろん、老後に必要な金額を試算した上で、それを上回る十分な資金がある場合には預金等の元本保証型の商品のみで運用を行う選択肢もあります。しかし、その場合でも、インフレによる資産の目減りを軽減するのに、投資は有効な手段であることを覚えておいて損はありません。
老後の資産運用は大きく失敗すると取り返しがつかないケースが多いため、投資の難易度は高くなります。しかし、上記のポイントを押さえた上で新NISAを上手に活用すれば、投資は老後を豊かにする心強い味方となってくれるでしょう。
新NISAを始めるときに押さえておきたいポイント
新NISAを始めるにあたって、以下の点を抑えておきましょう。
基本は「長期・積立・分散投資」
新NISAで投資をする際には「長期・積立・分散投資」を心がけましょう。
これまで説明したように、投資期間が長くなるほど複利効果と節税効果が高まる傾向にあります。また、毎月一定額を積立投資していくことで、購入タイミングが分散されるため、価格が下落しても「安く買うチャンス」と捉えることができるようになります。さらに、複数の銘柄や資産に分散して投資すれば、投資資産全体での価格変動リスクの軽減につながります。
目標を定めて投資する
投資において目標を定めることは大切ですが、金額や期間だけではなく「なぜ投資を行うのか」という目的を明確にするのもいいでしょう。
目標金額と投資期間が決まれば、投資金額に対して必要利回りを計算できます。必要利回りが高い場合、それだけハイリスクな投資にチャレンジしなければならないわけですが、ここで「なぜ投資を行うのか」が役立ちます。「教育資金」や「旅行資金」など、目的が決まっていれば失敗した時の影響も明確になり、前提としている目標金額と投資期間に問題がないか、冷静な判断ができるようになるでしょう。
無理のない投資を心がける
投資でお金を増やすことを期待するあまり、無理な投資をして生活に支障をきたすことになると本末転倒です。いくらまでなら投資に回しても大丈夫か、仮に損失を被ることがあってもどれだけの損失なら受け入れられるかをしっかり考え、投資計画を守ることが大切です。
また、失業や病気・ケガなど、万が一のための資金を生活防衛資金などと呼ぶこともありますが、生活防衛資金はしっかり確保した上で投資を行いましょう。
情報収集を積極的に行い、専門家への相談も検討する
投資を行う中で分からないことや不安に思うことがあれば、積極的に情報収集して解消するようにしましょう。特に、「長期・積立・分散投資を心がける」や「生活防衛資金をきちんと確保する」といった失敗を避けるための情報は非常に大切です。
ただし、これらの情報は基本的に一般論で語られることが多く、そのままでは実践で使えないケースも少なくありません。具体的に「何年間、どのような投資先に、毎月いくらずつ投資すればよいか」や「生活防衛資金としていくら現預金を確保しておけばよいか」などは、自分の属性や資産状況などの前提条件を踏まえた上で、決定する必要があります。当然のことながら、この前提条件は自分が一番詳しく知っているわけですから、投資方針も自分で決めなくてはなりません。これが「投資は自己責任」と言われる理由の一つでもあります。
とはいえ、投資未経験であれば、どうしても自分一人で決めるのが不安、知見のある人に助言してもらいたいと考えるのも自然なことだと思います。こうした場合の解決策としては、資産運用の専門家に相談するなどの方法が挙げられます。ただし、専門家に相談する場合でも、あくまで最終的な決定は自己責任の下、自分でしなければならないことを理解しておきましょう。
新NISAを始める際のよくある不安点と解決策
新NISAを始める際のよくある不安と解決策をまとめて紹介します。
投資をしたことがない
新NISAは、投資未経験の方から経験が長い方までを対象にした制度で、投資経験に関係なく最大1,800万円まで非課税で投資を行うことが可能です。せっかくある有益な制度ですから、投資を始める際は上手に活用しましょう。
初めての投資では「いつ」「何」に投資をすればよいかわからず不安に思うことも多いですが、少額からでもいいので、まずは実際に投資をしてみることが大切です。積立投資なら、一度設定してしまえばあとは自動で投資ができるので、継続的に投資を行う手段としておすすめです。
投資する資金が少ない
新NISAでは、一定の条件を満たした投資信託や上場株式などが購入可能です。投資信託なら、金融機関によっては100円から投資することも可能なため、無理のない金額で投資を始めることができます。少額では意味がないと思うかもしれませんが、長期で積み上げていけば相応の金額になりますし、なにより、早くから投資経験を積んでおけば、将来投資金額が増えた時にも大きく役立ちます。
投資は損をしそうで怖い
投資に慣れない間は損をすることに対して多くの方が不安に思いますが、預金など元本保証型の商品のみで運用すると老後資金が不足するかもしれないと、やっぱり不安に思うから投資を検討するのではないでしょうか。
どちらの不安もバランスよく解消するためには、投資も行いながら堅実に資産形成を進めていく必要があると考えます。これまで解説したとおり、リスクをゼロにすることはできなくても、リスクを抑える工夫は可能です。長期・積立・分散投資をベースに、自分に合ったリスクを取り、それに見合うリターンを狙うことを目標に取り組んでみてはいかがでしょうか。
新NISAは柔軟性の高い非課税制度であるため、積極的に活用しましょう。投資をいつから始めるかについては、投資期間が長いほど複利効果や節税効果が高まる、ライフイベントに合わせた資産形成を行いやすいなどの理由から、できるだけ早く始めるのがいいと考えられます。
実際に新NISAを始める際は、「長期・積立・分散投資」を基本に考えるといいでしょう。投資目標をあらかじめ定めたうえで、無理のない範囲から始めることが大切です。
初めての投資は不安も大きいと思いますが、新NISAは少額でも活用することが可能です。まずは口座申込みから、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

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