新NISAとiDeCoは どちらを優先? 特徴を徹底比較してわかりやすく解説

2024年にNISA制度が改正され、新NISAが始まりました。新NISAとiDeCoは何が違うのか、どちらを使えばいいのか悩む方も多いかもしれません。
この記事では新NISAとiDeCoを徹底比較し、ニーズ別にどちらが向いているかや具体的な運用例まで掘り下げて解説します。

- ●新NISAとiDeCo、資産形成におすすめなのは?
- ●新NISAとiDeCo、違いを徹底比較
- 1.対象年齢で比較する
- 2.年間投資上限額で比較する
- 3.対象となる商品で比較する
- 4.税制メリットで比較する
- 5.資金の引き出しタイミングで比較する
- 6.手数料で比較する
- ●新NISAが向いている人の特徴
- ●iDeCoが向いている人の特徴
- ●どう運用する?具体的な運用例を紹介
- ・まずは新NISAで、慣れてきたらiDeCoで運用
- ・iDeCoの所得控除で新NISAを上乗せ
- ●新NISAとiDeCoは「使い分け」がポイント
- ●まとめ
新NISAとiDeCo、資産形成におすすめなのは?
新NISAとiDeCo、どちらを優先すればよいのか気になる方は多いかもしれません。しかし人によって年齢やライフステージ、資産規模などが異なるため一概に「こちらが良い」と断言することは難しく、自分自身に合った運用方法を見つけることが重要です。また、各制度の開設条件、加入条件を満たしていれば併用も可能であり、どちらか片方を選ばなければならないということはありません。
新NISAもiDeCoもそれぞれにメリットやデメリットが存在します。自分に合った運用方法を見つけるためにも、まずはそれぞれの特徴を知ることが大切です。
新NISAとiDeCo、違いを徹底比較
ここからは新NISAとiDeCoは具体的に何が違うのか、下記の6項目に分けて詳しく解説します。どちらを優先させるのか検討する際の参考にしてみてください。
1.対象年齢で比較する
新NISAとiDeCoの対象年齢を比較すると、以下のとおりになります。
新NISA | iDeCo |
---|---|
18歳以上 ※旧NISAと同様 |
基本的に20歳から65歳まで |
新NISAは旧NISAと同様、日本に居住する18歳以上の方が対象です。一方で年齢の上限に決まりはないため、18歳以上であれば日本居住者に限り誰でも利用することができます。
iDeCoは公的年金に上乗せして「私的年金」を構築する目的があるため、国民年金に加入しているかどうかが大きなポイントとなります。従来は60歳までしか加入できませんでしたが、2022年の法改正で加入年齢の要件等が拡大され、国民年金の第2号被保険者(会社員や公務員など)や国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の方も加入できるようになりました。
2.年間投資上限額で比較する
次に、新NISAとiDeCoの年間投資上限額を比較します。
新NISA | iDeCo |
---|---|
最大360万円(つみたて投資枠と成長投資枠を併用する場合) | 最大81万6000円(自営業者等の場合) |
iDeCoは加入資格によって拠出限度額が異なり、最も掛金が多い自営業者などの場合でも年間81万6,000円です。
一方で、新NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠を合算すると360万円まで投資可能です。
したがって、単純に年間投資上限額で比較すると、新NISAの方がより多くの投資が可能です。
ただし、「生涯投資可能額」で考えると状況は変わります。新NISAは非課税保有限度額が1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)となっており、どれだけ経済的に余裕があっても元本1,800万円以上を投資することはできません(ただし、売却すれば枠の再利用が可能)。
一方で、iDeCoには「総額の限度額」という考え方はないため、年間の拠出限度額をできるだけ長く積み立てることで運用総額を増やすことが可能です。例えば自営業者で20歳から60歳まで40年間投資上限額いっぱいまで拠出した場合、元本3,264万円を運用できる計算となります。
会社員の場合、自営業者ほど投資上限額は高くなく、最大で月2万3,000円(年間27万6,000円)の拠出です。これを40年間継続したとしても1,104万円しか積み立てられません。このため、会社員の場合は新NISAの方が年間投資上限額、非課税運用総額ともに多くなります。
当然のことながら、非課税運用総額については新NISAとiDeCoを併用するのが最も多くなるため、この項目で比較して優先順位を決めるケースは少ないかもしれません。しかし、それぞれの制度が最大でどれだけ非課税で運用できるのかを知っておくことは有益でしょう。
3.対象となる商品で比較する
新NISAとiDeCoを対象となる商品で比較すると、以下のような違いがあります。
新NISA | iDeCo |
---|---|
つみたて投資枠:長期の積立分散投資に適した投資信託 成長投資枠:上場株式・投資信託など(除外条件あり) |
元本確保型商品(定期預金や保険商品等)と投資信託 |
新NISAのつみたて投資枠の場合、金融庁が定める基準を満たす投資信託が対象で、これは現在のつみたてNISAと同様です。一方で成長投資枠の場合は、除外条件があるもののそれ以外の投資信託や上場株式等も対象に含まれます。
iDeCoの対象商品は、元本確保型商品と投資信託の2つに大きく分けられます。
元本確保型商品は文字通り原則として元本が確保され、 所定の利息が上乗せされる運用商品で、定期預金や保険商品などが当てはまります。取り扱いがない金融機関もあり、1本から数本の取り扱いという金融機関が多いようです。こちらは、新NISAでは運用することができません。
投資信託の取り扱いについても金融機関によって異なりますが、10本から数十本程度の取り扱いという金融機関が一般的のようです。新NISAの場合、100本を超える投資信託を取り扱っている金融機関も多いため、これと比較するとかなり少ないと言えます。ただし、DC(確定拠出年金)専用の投資信託というのも存在し、新NISAでは購入することのできない商品もあります。
まとめると、対象商品の観点から比較する場合、「ラインナップが豊富なのが新NISA、元本確保型商品でも運用できるのがiDeCo」といえそうです。このため、できる限りリスクをとりたくない場合は、iDeCoを活用して元本確保型商品で運用するのも一つの手です。
新NISAのつみたて投資枠の対象商品については「新NISAのつみたて投資枠の対象商品は?カテゴリ別にご紹介」にて詳しく解説しています。併せてご覧ください。
4.税制メリットで比較する
新NISAとiDeCoの税制メリットを比較するため、それぞれの節税に係る制度を洗い出してみます。
新NISA | iDeCo |
---|---|
運用時:運用益が非課税 | 拠出時:掛金が全額所得控除 運用時:運用益が非課税 受取時:退職所得控除や公的年金等控除 |
運用益が非課税になるというのは新NISAもiDeCoも共通で、拠出時、受取時がiDeCo特有の制度となります。
まず、iDeCoでは拠出時に掛金が全額所得控除となります。その節税効果は所得水準によって異なりますが、iDeCoの最も大きなメリットの一つとして挙げることができるでしょう。
一方で、iDeCoは受取時に退職所得や雑所得として課税されます。新NISAでは運用益と同様に元本が課税されることはないため、これはiDeCoのデメリットとして挙げられるでしょう。ただし、退職所得控除や公的年金等控除によって一般的には課税額が大きく減額されます。
まとめると、iDeCoは掛金が全額所得控除される分、受取時に課税されますが、各種控除によって大きく減額されるため、新NISAと比較して節税メリットが大きくなる傾向にあるといえます。ただし、所得水準や運用結果、資金の受け取り方によって節税メリットの大きさが変わることには注意しましょう。
5.資金の引き出しタイミングで比較する
新NISA | iDeCo |
---|---|
好きなタイミングで売却可能 | 原則60歳まで引き出し不可 |
新NISAは実際に運用を始めた後も、好きなタイミングで売却(解約)して資金を引き出すことができます。
このため、病気やけがなど突発的に資金が必要になったときに引き出せることはもちろん、教育費など計画的に引き出しながら運用を行うことも可能です。
一方で、iDeCoは原則60歳になるまで引き出すことができません。掛金の減額はできるものの、いったん運用を開始すると基本的には止められない点に注意する必要があります。
6.手数料で比較する
最後に新NISAとiDeCoの手数料を比較します。
新NISA | iDeCo |
---|---|
口座開設手数料等はかからない。 購入時手数料や売買手数料がかかる場合がある。 |
加入・移換時手数料:2,829円(初回1回のみ) 加入者手数料:105円(掛金納付の都度)+66円(毎月)(金融機関によって運営管理手数料がかかる場合もある) 受取時手数料:440円(振込の都度)等 |
新NISAには口座開設手数料等はかかりませんが、商品を購入する際に投資信託は購入時手数料、株式は売買手数料がかかる場合があります。
一方、iDeCoは加入・移換時手数料(初回1回のみ)として2,829円かかります。また、加入者手数料として国民年金基金連合会に105円(掛金納付の都度)と信託銀行に66円(毎月)かかる他、金融機関に支払う手数料も発生する場合があります。さらに、受取時には振込の都度440円がかかるなど、iDeCoの方が多くの場面で手数料がかかります。
新NISAが向いている人の特徴
ここまでの内容を踏まえて、新NISAとiDeCoそれぞれ、どのようなニーズとマッチしやすいのか整理してみましょう。まず新NISAが向いているのは下記のようなニーズのある方です。
- ●まとまった資金をより早く投資したい
- ●幅広いラインナップから商品を選びたい
- ●老後資金以外の目的でも使う資金を運用したい
新NISAは、年間投資枠が最大360万円あることや幅広いラインナップがあることが魅力でしょう。また、好きなタイミングで売却できるため、ライフステージに合わせた運用にも不測の事態にも対応できることがメリットといえます。
iDeCoが向いている人の特徴
一方でiDeCoが向いているのは下記のようなニーズのある方です。
- ●元本確保型の商品で運用したい
- ●所得控除の恩恵を受けたい
- ●老後資金の準備に強い不安を感じている
iDeCoであれば、所得控除の恩恵を受けながら元本確保型の商品に投資することも可能です。ただし、iDeCo特有の手数料には注意しましょう。
また、公的年金のみで生活するのが厳しい見込みで、老後資金の準備に強い不安を感じている方にとっては、iDeCoの「原則60歳まで引きし不可」という制限をメリットと捉えることもできます。公的年金と同様に、iDeCoは老後資金準備を目的とした場合、非常に強力なツールとなるでしょう。
どう運用する?具体的な運用例を紹介
新NISAとiDeCoの比較を踏まえて、それぞれ向いている人の特徴をまとめました。それでも、どちらがいいのか悩んでいる方のために、さらに掘り下げて具体的な運用例を紹介したいと思います。
まずは新NISAで、慣れてきたらiDeCoで運用
新NISAは口座開設手数料が無料かつ、好きなタイミングで売却できるため、iDeCoと比較してより手軽に投資ができると考えられます。まずは、新NISAを活用して投資を開始し、投資の効果を実感してからiDeCoにもチャレンジしてみると良いのではないでしょうか。
年齢とともに所得が高くなるのであれば、よりiDeCoの所得控除の恩恵が受けられるタイミングで始めるという考え方にもマッチします。
iDeCoの所得控除で新NISAを上乗せ
老後資金の準備に強い不安を感じている方は、まずはiDeCoから始めてみるのはいかがでしょうか。そして、iDeCoの所得控除で節税できた分を新NISAで投資し、教育資金や住宅資金の準備に回すという手もあります。
所得が高い方は節税効果も大きく、その分多く新NISAで投資できるため、効果を実感しやすいと思います。
新NISAとiDeCoは「使い分け」がポイント
新NISAとiDeCoはそれぞれのメリット・デメリットを踏まえて使い分けることがポイントです。
「新NISAとiDeCoのどちらか片方を限界まで投資しないともう片方を利用できない」なんてルールはありません。せっかくある制度なのですから、ニーズに合わせてどちらも活用するのが賢い資産形成と言えるのではないでしょうか。
新NISAとiDeCoはどちらを優先させるべきなのか、それぞれの特徴を比較しながら解説しました。
両者には、対象商品や節税メリット、資金の引き出しタイミングなどで違いがあり、状況によって向き不向きがあります。
「老後資金以外の目的でも使う資金を運用したいなら新NISA」、「所得控除の恩恵を受けたいならiDeCo」といったように自分のニーズとそれぞれの制度のメリット・デメリットを照らし合わせて使い分けることが賢い資産形成のポイントと言えるでしょう。

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