【調査を読み解くシリーズ】NISA口座数の目標達成のカギは「こども支援NISA」!?
2025/10/10

「調査を読み解く」シリーズの第6回です。今回のコラムでは、2024年1月にスタートした新しいNISA(以下、新NISA)の状況について、2025年6月末時点のNISAの利用状況調査(2025年9月24日公表)のデータを基に考察します。
NISA口座数の目標達成は可能か?
2024年1月にスタートした新NISAは、着実に普及が進んでいます。
金融庁が2025年9月24日に公表したデータによると、2025年6月末時点で口座数は2,696万口座、旧制度も含めた総買付額は63兆円に達しました。
【図表1】
NISA口座数と総買付額の推移
出所:金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
2022年11月に発表された「資産所得倍増プラン」の目標には、 NISA口座数3,400万口座、総買付額56兆円(2027年12月末時点で)が掲げられています。総買付額は前倒して目標を達成しました。一方、口座数については着実に増加しているものの目標達成は不透明になってきています。
【図表2】はNISA口座数の四半期ごとの「増加数」の推移です。
新NISAがスタートした2024年第1四半期には約195万口座も増加しました。しかし、その後の口座数の伸びは鈍化し、2024年第4四半期や2025年第2四半期の増加ペースは、「資産所得倍増プラン」公表前の水準(例:2022年第3四半期)と同程度に戻っています。
【図表2】
四半期ごとのNISA口座の増加数
出所:金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」のデータを基にアセットマネジメントOne作成
今後の増加数がどのように変化していくか分かりませんが、関心が高い層がNISA口座を既に開設済みであると考えると、まだ開設していない方々は比較的関心が低い層となるので、普通に考えると増加数は鈍化していくと考えられます。(ただし、既にNISAで投資している人たちの成功体験に関心を寄せる人が増えたり、金融経済教育の普及により投資の重要性に気付く人が増えることにより、NISA口座の開設が進む可能性もあります。)
ここで今後の口座数の簡易的な試算をしたいと思います。
以下の4つのケース別に2027年12月末の口座数を試算しました。
- ① ペース鈍化:40万口座増/四半期
- ② 横這い(2025年第2四半期並み):50万口座増/四半期
- ③ 過去1年平均並み:70万口座増/四半期
- ④ ペース拡大:80万口座増/四半期
結果をグラフにしたものが【図表3】です。
【図表3】
NISA口座数の試算
※上記は試算したものであり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
過去1年間(2024年第3四半期~2025年第2四半期)の平均並みである、四半期で70万口座ずつ増加したとしてようやく目標達成が見えてくるいう水準です。目標達成には何かしら新たな取り組みが求められます。
口座数目標達成のカギは「こども支援NISA」!?
2025年8月29日に金融庁が令和8年度税制改正要望として取りまとめた中に、NISA制度を充実させる要望も含まれています。その内容は以下の通りです。
- ① こども支援の一環としての、つみたて投資枠における対象年齢等の見直し
- ② 様々な資産運用ニーズに応えるための、対象商品の拡充等
- ③ 投資商品の入替をしやすくするための、非課税保有限度額の当年中の復活
出所:金融庁「令和8年度 税制改正要望項目」よりアセットマネジメントOne作成
②や③もNISA利用者の利便性向上に資する内容で、特に③が成立すると喜ぶ利用者は多くいるのではないでしょうか。ただ、これまでNISA口座を開設していなかった人々がこぞって開設しだすような制度の充実とはまた別の話かと思います。
数百万口座単位で増加する可能性があるとしたら①の要望「こども支援の一環としての、つみたて投資枠における対象年齢等の見直し」(いわゆる、「こども支援NISA」)だと思います。
同じような目的のジュニアNISAが新NISAスタートのタイミングで制度が終了となりましたが、終了の直前には約124万口座ありましたので、同程度の口座開設が期待されます。さらに、新NISAがスタートしてから、18歳未満の子を持つボリュームゾーンであろう30歳代・40歳代のNISA口座数は200万口座以上拡大したため、さらにこども向けの口座数が拡大するポテンシャルがあります。
【図表4】は、NISA口座保有者に対して、「NISA は18歳以上でないと口座開設できませんが、未成年者でもNISA(つみたて投資枠)の口座開設ができるようになった場合、子や孫に開設を勧めたいですか。」と聞いたアンケート結果で、大半が「はい」(64.0%)と答えており、また、30代以下や40代など年代が若い回答者ほど「はい」の割合が高い結果となり、こども支援NISAに対する期待は高いと言えそうです。
【図表4】
未成年者でもNISA(つみたて投資枠)の口座開設ができるようになった場合、子や孫に開設を勧めたいか
質問:NISA は18 歳以上でないと口座開設できませんが、未成年者でもNISA(つみたて投資枠)の口座開設ができるようになった場合、子や孫に開設を勧めたいですか。(子や孫がいない場合、対象者がいると想定してご回答ください。)(1つだけ)
出所:日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書」(2025年9月)のデータを基にアセットマネジメントOne作成
仮に2025年12月の税制改正大綱にこども支援NISAが盛り込まれることとなり、2027年中にも制度が開始することとなれば、一気に数百万単位の口座の開設が期待されます。これがNISA口座数増加の起爆剤となる可能性があると思われます。
※本コラムは「こども支援NISA」が成立した場合、その口座数もNISA口座総数に加える前提で執筆しているが、口座数目標3,400万口座のベースとなった口座数は旧制度の一般NISAおよびつみたてNISAの合算値であり、ジュニアNISA口座数は含まれていないことに留意が必要。仮にこども支援NISAが成立した場合に目標としてカウントする数にこども支援NISAの数は入らない可能性はありうる。
(執筆 : 坂内 卓)