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ヨーロッパの小国・ルクセンブルク

2018/11/22

知恵のハコ

皆さまはルクセンブルクという国をご存知でしょうか。フランス・ベルギー・ドイツに囲まれた小さな国、ルクセンブルク。聞いたことがあるぐらいという方がほとんどと思われますが、実は、金融の世界ではルクセンブルクは非常に重要で、ケイマン諸島(英国領)と同じくらい知らない人はいないという国です。

ルクセンブルク地図

ルクセンブルク?

ルクセンブルクはヨーロッパの西方に位置しており、東にドイツ、南にフランス、北西にベルギーと国境を接しています。人口わずか約60万人、面積2,586平方キロメートル(広さは神奈川県と同じくらい)という小国で、世界で唯一の現存する大公国です。隣国のベルギー、オランダと併せてベネルクス三国と呼ばれています。首都は、ルクセンブルク市(国名と同じ)で「北のジブラルタル」の異名をもつ頑強な城郭都市です。渓谷と断崖にそびえる城壁が美しい街並みは、世界遺産に登録されており、豊かな森に囲まれた古城や教会を訪れるとまるで中世にタイムスリップしたかのようです。

美しい風景を楽しむために観光で訪れたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、一般的には、隣国のフランスやドイツを見て回られる方が圧倒的に多く、知名度はそれほど高くありません。では、どうして金融の世界では、知らない人はいないという国になったのでしょう。

金融立国ルクセンブルク

ルクセンブルクは,1970年代初頭の石油危機以降、金融立国をめざしそれまで経済成長を支えてきた鉄鋼業中心の産業構造から、金融サービス業中心の産業構造への転換を図りました。結果この政策が成功し、ロンドン、フランクフルトと並ぶ、欧州を代表する金融センターとしての地位を確立しました。
小国で政情が安定していることから投資家にとって信頼できるというそもそもの土壌に加え、金融立国を目指す政策として、投資信託に係る法制度や決済制度を整備し投資を行いやすくしたこと、また、優遇税制を推進し税務面で投資信託の普及を後押したことで、投資信託の運用拠点として発展しました。市場規模は、欧州第1位はもちろんのこと、米国に次ぐ世界第2位になり、2018年6月末時点の投資信託残高は約5兆米ドル(約547兆円※)になります。

(※2018年6月末時点 110.75 円/米㌦)

規制オープンエンド投資信託残高上位10カ国(2018年6月末)
単位: 10億米ドル
 国名残高
1 米国 22,396
2 ルクセンブルク 4,939
3 アイルランド 2,899
4 ドイツ 2,271
5 フランス 2,223
 国名残高
6 オーストラリア  2,093
7 英国 1,997
8 中国 1,805
9 日本 1,800
10 カナダ 1,272

※規制オープンエンド投資信託とは、ミューチュアルファンド、上場投信、機関投資家向けファンドを含みます。

(出展:投資信託協会 「投資信託の世界統計」)

また、投資信託の運用拠点としてのみならず、証券決済の拠点でもあります。欧州市場における債券の受渡しや決済の集中管理、国際的な株式の決済業務等を行うために、1970年にEU(欧州連合)11カ国の金融機関の参加のもと国際証券決済機関であるセデル(Cedel:Centrale de Livraison de Valeurs Mobilières)が設立され、当時、ブリュッセルに本拠を置く1968年に設立されたユーロクリア(Euroclear)と2大集中決済機構といわれていました。その後、欧州の通貨統合によって欧州証券市場の統合が進み、ドイツ・ベルゼ・クリアリング(Deutsche Börse Clearing)と1999年に合併し、2000年にクリアストリーム(Clearstream)と名称を変え、欧州最大の証券決済機関として今もルクセンブルクに本拠を構えています。

意外と身近なルクセンブルク

日本の投資家である皆さまから見れば、ルクセンブルクで設定されている投資信託は、外国籍投資信託と呼ばれ、外国の法律に基づき外国で運用・管理されています。海外の株式や債券で運用する投資信託でも日本で設定されたものは、国内籍投資信託に分類されます。一般に外国籍投資信託には、様々な種類のものがあり、日本国内で販売される公募外国籍投資信託は、ほとんどが外貨建て(米ドルやユーロ、ポンド、豪ドルなど)で、その純資産総額は、2018年3月末時点で約5兆8,000億円、ファンド数は934本です。そのうち、ルクセンブルク籍は36.6%を占めます。ケイマン諸島籍と合わせると、全体の約9割にもなります。

公募外国投資信託証券の状況

(出展:日本証券業協会 「公募外国投資信託証券の状況」)

皆さまは、米ドルやユーロなどの外貨建てMMFを保有されていませんか? おそらく一番身近なルクセンブルク籍の外国籍投資信託は、この「外貨建てMMF」でしょう。一度、目論見書や運用報告書で確認してみてください。

発展するルクセンブルク

このように、政策転換が功を奏し欧州を代表する金融センターとなったルクセンブルクは、金融業で発展し1993年から約25年もの間ずっと、一人当たりの名目国内総生産(GDP)が世界第1位(2017年、約10.6万米ドル)という富裕国となりました。ちなみに、第2位はスイス(同、約8.1万米ドル)で、アメリカは第7位(同、約6万米ドル)、日本は第24位(同、約3.8万米ドル)です。

一人当たり名目GDP(米ドル)2017年

(出展:IMF World Economic Outlook Database, October 2018)

ルクセンブルクには、中世の風景をそのまま残しつつも、鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミッタル(ArcelorMittal)が本部を置き、欧米の金融機関の拠点が数多く名を連ね、また、近年は情報通信技術(ICT)、電子商取引などの新しい産業の支援にも力を入れ、スカイプ(Skype)をはじめ多くの企業が進出しています。 中世の街並みと発展した資本主義経済が共存する国ルクセンブルク、まだまだ隠れた魅力がいっぱいかもしれません。

(参考文献)

  • 外務省 ルクセンブルク大公国 基礎データ
  • ルクセンブルグ籍投資信託の概要  三菱UFJ信託銀行 視点2009年11月号

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