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エクエーター原則への取り組み

エクエーター原則とは

エクエーター原則とは

エクエーター原則とは、大規模な開発・建設を伴うプロジェクトに関連する融資を行う際に、プロジェクトが環境・社会に及ぼす影響を特定・評価し、管理するため金融機関が中心となり策定した枠組みです。
具体的には世界銀行グループの一員である国際金融公社(IFC)が定める「IFCパフォーマンススタンダード」および「世界銀行グループEHS(環境・衛生・安全)ガイドライン」にもとづき、各金融機関独自のガイドラインを文書化するとともに事業者によるプロジェクトの環境・社会への配慮状況を確認するための内部管理体制を構築するものです。
エクエーター原則の対象は一定の基準を満たすプロジェクトファイナンス等で、プロジェクト所在国や業種を問わず適用されます。
エクエーター原則を採択した金融機関は融資実行に際して策定したガイドラインの遵守状況を確認し、遵守しないプロジェクトに対しては融資を行いません。
2022年2月末現在38カ国から128の金融機関がエクエーター原則を採択しており、国際的なプロジェクトファイナンスの多くをカバーしています。

エクエーター原則の適用対象は以下の通りです。

  • プロジェクトファイナンス
    返済原資が原則として特定のプロジェクト・事業から生み出されるキャッシュフローに限定されるファイナンス手法を用いた融資
  • プロジェクト紐付きコーポレートローン
    資金使途の過半が特定のプロジェクト向けであるコーポレートローン
  • ブリッジローン
    将来的にプロジェクトファイナンスや特定プロジェクト向けのコーポレートローンに借換えられる予定のつなぎ融資
  • プロジェクト紐付きリファイナンス
    過去エクエーター原則が適用された既存の融資を新たに置き換えることを目的とした融資
  • プロジェクト紐付き買収ファイナンス
    過去エクエーター原則が適用されたプロジェクトやその支配権を有する事業会社の買収を目的とする融資

詳細はエクエーター原則の公式ウェブサイトをご覧ください。

• Equator Principles(英文)

エクエーター原則採択の背景

当社は「エッセンシャリティー(Essentiality)」を投資哲学として、プロジェクトファイナンスを通じて国や地域社会に必要不可欠なインフラ事業へ融資を行うインフラデットファンドを運用しています。大規模なプロジェクトは自然環境や地域社会に対して大きな影響を及ぼす可能性があるため、融資するプロジェクトにおける環境・社会リスクの管理および社内運営体制をさらに強化することが重要と考え、2021年11月にエクエーター原則を採択しました。

当社における具体的な取り組み

社内運営体制

当社はエクエーター原則の採択にあたり、エクエーター原則を適用する際のプロセスとルールを定めた「エクエーター原則実施マニュアル」に基づき、エクエーター原則遵守確認を含む環境・社会リスク評価を実施しています。具体的にはエクエーター原則への適合性を投資委員会で確認し、プロジェクトのカテゴリーに応じて求められる環境・社会に対する配慮を借入人に要請していきます。

環境・社会リスク評価の実施

◆カテゴリー付与

エクエーター原則の原則1(レビューおよびカテゴリーの付与)に従ってプロジェクトの環境・社会に対する潜在的なリスクと影響度合いを評価し、その結果に応じて以下のカテゴリーを付与します。それぞれのカテゴリーの定義は以下の通りです。

原則1 レビューおよびカテゴリーの付与
カテゴリー定義
A 環境・社会に対して重大な負の潜在的リスクまたは影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響が多様、回復不能または前例がないプロジェクト。 
B 環境・社会に対して限定的な潜在的リスクまたは影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響の発生件数が少なく概してその立地に限定され、多くの場合は回復可能であり、かつ緩和策によって容易に対処可能なプロジェクト。
C 環境・社会に対しての負のリスクまたは影響が最小限、または全くないプロジェクト。

◆環境・社会影響レビュー

付与したカテゴリーに応じてエクエーター原則の遵守状況を確認します。例えば最もリスクが高いカテゴリーAを付与したプロジェクトについては、エクエーター原則の原則2から原則10までの各原則が求める環境・社会配慮が実施されていることを確認します。また確認結果を踏まえ、原則8(誓約条項(コベナンツ))に基づき融資契約にエクエーター原則の遵守に関する誓約事項を盛り込むことを借入人と合意します。

原則2 環境・社会アセスメントの実施
原則3 適用される環境・社会基準の遵守
原則4 環境・社会マネジメントシステムの構築、アクションプランの策定
原則5 ステークホルダー・エンゲージメントの実施
原則6 苦情処理メカニズムの構築
原則7 独立した環境・社会コンサルタントによるレビューの実施
原則8 誓約事項(コベナンツ)の設定
原則9 独立した環境・社会コンサルタントによるモニタリングと報告の実施
原則10 情報開示と透明性の確保

IFCパフォーマンススタンダードと世界銀行グループ環境・衛生・安全(EHS)ガイドライン

エクエーター原則では「IFCパフォーマンススタンダード(IFC Performance Standards)」および「世界銀行グループ環境・衛生・安全(EHS)ガイドライン(The World Bank Group Environmental, Health and Safety (EHS) Guidelines)」を参照しています。これらは民間セクターにおける環境および社会的リスク管理のベンチマークとして世界的に広く採用されています。

<IFCパフォーマンススタンダード>

プロジェクト実施者向けの環境・社会ガイドラインであり、以下の8項目で構成されています。

  • PS1: 環境・社会に対するリスクと影響の評価と管理
  • PS2: 労働者と労働条件
  • PS3: 資源効率と汚染防止
  • PS4: 地域社会の衛生・安全・保安
  • PS5: 土地取得と非自発的移転
  • PS6: 生物多様性の保全および自然生物資源の持続的利用の管理
  • PS7: 先住民族
  • PS8: 文化遺産

詳細はIFCの公式ウェブサイトをご覧ください。

• International Finance Corporation(英文)

<世界銀行グループ EHS(環境・衛生・安全)ガイドライン>

世界銀行グループが定めたプロジェクトを実施する際に遵守すべき「環境(Environment)」「衛生(Health)」「安全(Safety)」に関する基準です。全産業に共通する「一般EHSガイドライン」と産業セクター特有の指標を含む「産業セクター別ガイドライン」で構成されています。

詳細はIFCの公式ウェブサイトをご覧ください。

• International Finance Corporation(英文)

エクエーター原則適用実績

2022年4月1日から2023年3月31日に調印したエクエーター原則適用案件は以下のとおりです。

1. プロジェクトファイナンス

2022年4月1日から2023年3月31日の間に融資したエクエーター原則適用対象となるプロジェクトファイナンスは1件でした。内訳は下表のとおりです。

  カテゴリー別件数
カテゴリーA カテゴリーB カテゴリーC
- 1 -
カテゴリー別件数の内訳
セクター カテゴリーA カテゴリーB カテゴリーC
鉱業 - - -
インフラ - - -
石油・ガス - - -
電力 - - -
その他 - 1 -
地域 カテゴリーA カテゴリーB カテゴリーC
米州 - - -
欧州中東アフリカ - 1 -
アジア太平洋 - - -
指定国/指定国以外の国 カテゴリーA カテゴリーB カテゴリーC
指定国 - - -
指定国以外の国 - 1 -
独立したレビュー カテゴリーA カテゴリーB カテゴリーC
有り - 1 -
無し - - -

エクエーター原則は開発案件が適用対象であるため、融資した案件のうち完工後案件については計上しておりません。一方で当社が運用するインフラデットファンドでは、エクエーター原則適用対象外の案件についても自主的にエクエーター原則の遵守状況を確認しています。

2. プロジェクト紐付きコーポレートローン

対象はありません。

3. プロジェクト紐付きリファイナンスおよびプロジェクト紐付き買収ファイナンス

プロジェクト紐付きリファイナンスおよびプロジェクト紐付き買収ファイナンスに該当する案件は、プロジェクトファイナンスおよびプロジェクト紐付きコーポレートローンと同様の環境社会リスク評価を行っているため、上記1.および2.に含めています。

4. プロジェクトファイナンスアドバイザリー業務

対象はありません。

エクエーター原則遵守状況のモニタリング

当社は借入人から提出される定期報告書等により適用対象となる案件がエクエーター原則に関する誓約事項を遵守しているかを定期的に確認し、プロジェクトの環境・社会への配慮を継続的に確保するよう努めています。

社内研修の実施

エクエーター原則の採択に際し社内マニュアルの整備に加えて社内研修を実施し、エクエーター原則の概念及び環境・社会リスク評価の実施フローに対する理解を深めました。今後も定期的な社内研修の実施等を通じて環境社会配慮への意識向上に努めます。