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海洋プラスチック問題への対策を考える-【SDGs目標14】海の豊かさを守ろう-

2022/11/04

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これまで『わらしべ瓦版』では、「SDGs」をテーマとした記事を幾度かご提供してきました。 以前ご紹介した19位にランクダウン!日本のSDGs達成度と今後の課題では、「持続可能な開発レポート2022(Sustainable Development Report 2022)」の内容を取り上げ、日本の主要な課題を紹介しました。

今回は、国土が海に囲まれた日本が解決に向けて推進していかなければならない主要課題である「【目標14】海の豊かさを守ろう」、その中でも海の生態系に大きな影響を与えている「海洋プラスチック問題」を取り上げ、私たちができる対策を考えたいと思います。また、筆者がその問題を意識し始めたきっかけについてもご紹介します。

深刻な「海洋プラスチック問題」とは

地球の面積の7割を占める海から、私たちは生きていくうえで多くの恩恵を受けています。 しかし、その海は今、多くの深刻な問題を抱えています。その中の一つが、海を漂う大量のプラスチックごみの問題です。海のプラスチックごみは「海洋プラスチック」と呼ばれ、海の生態系に深刻な被害をもたらしています。
プラスチックは、軽くて丈夫、さびや腐食に強い、加工しやすい、衛生的で密封性が強いなどの優れた特徴を持ちます。私たちの生活にプラスチック製品は欠かせないものとなっており、生活のあらゆる場面にプラスチック製品が使用されています。
その一方で、自然環境下における分解性が低いことから、ちゃんとごみとして回収されればよいのですが、例えば、ポイ捨てや不法投棄といった行為などで陸上に出たプラスチックごみは、風雨によって川などに運ばれて海に流れ込み、波などによって砕かれたり、紫外線で分解されたりして、小さなプラスチック片となります。近年、この「マイクロプラスチック(微細なプラスチックごみの総称で、5ミリメートル以下のものを言います。)」(<図表1>)による海の生態系への影響の懸念が高まっています。
マイクロプラスチックはごく小さなプラスチック片であるため、海洋生物が海水と一緒に飲み込んでしまったり、エサと間違えて食べてしまったりします。プラスチックは消化できないため、体内に残り続けます。また、こうした生き物をエサにしている海鳥や大型の魚などにも、マイクロプラスチックがたまっていくことになります。例えば、2019年にスコットランドの海岸で見つかったマッコウクジラの死体を解剖したところ、胃の中から重さにして100キログラムもの大量のプラスチックごみが見つかりました。
これは、魚を食べて生活をしている私たちも見過ごしてはならない大きな問題です。

<図表1>マイクロプラスチックの分類

一次的マイクロプラスチック マイクロサイズで製造されたプラスチック。洗顔料・歯磨き粉等のスクラブ材等に利用されているマイクロビーズ等。排水溝等を通じて自然環境中に流出。微細なため、製品化された後の対策や自然環境中での回収が困難。
二次的マイクロプラスチック 大きなサイズで製造されたプラスチックが、自然環境中で破砕・細分化されてマイクロサイズになったもの。発生抑制対策として、普及啓発や廃棄物管理、リサイクルの推進等が有効。マイクロ化する前段階での回収も必要。

※環境省「海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組」(2016)をもとにアセットマネジメントOne作成

2016年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)では、海洋プラスチックに関する報告書が発表されました。世界のプラスチック生産量は1964年~2014年の50年間で20倍以上に急増していて、今後20年間でさらに倍増する見込みであること。毎年少なくとも800万トン分ものプラスチックが海に流れ出てしまっており、海のプラスチックの量は、2050年までには魚の量を重量ベースで上回る予想であるといった、驚愕的な内容もありました。また、プラスチックのリサイクルを促進し、海など自然界への流出を防ぐ対策の強化が急務だと指摘しています。

海洋プラスチック問題の大きな原因であるポイ捨てや不法投棄はもちろんいけませんが、自然界への流出を防ぐべく、そもそものプラスチックごみを削減するためには、どういった意識や行動が重要となるでしょうか。

プラスチックごみ削減のためにできる対策

一般社団法人プラスチック循環利用協会が2021年12月発行した「2020年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」によると、2020年の国内の廃プラスチック(使用後に廃棄されるプラスチック)排出量は822万トンあり、産業系廃棄物の413万トンに対し、家庭などから出る一般系廃棄物が410万トンと、生活を営むうえでも多くの廃プラスチックが排出されることがわかります。その多くは包装・容器類です。 なお、822万トンの排出されたプラスチックのうち86%がリサイクルされています。一方で、リサイクルされずにごみ処分場で埋立・単純焼却されるものも少なくありません。
資源を有効に使うため、プラスチックによる環境への負荷を減らすために、3R(スリーアール)を実行していく必要があります。3Rとはリデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3つのR(アール)の総称です。

  • リデュース(Reduce):物を大切に使い、ごみを減らすこと
  • リユース(Reuse):使える物は、繰り返し使うこと
  • リサイクル(Recycle):ごみを資源として再び利用すること

この3Rに、リペア(Repair)、リフューズ(Refuse)などを加えて、4Rや5Rとする考え方もあります。

  • リペア(Repair):修理して直すこと
  • リフューズ(Refuse):ごみになるものを買わないこと

これらの行動を一人一人が普段から意識し、いかに長くコツコツと継続していくことが重要だと考えます。

5R

日本では、プラスチックごみの排出量を削減するため、2020年7月1日からレジ袋の有料化がスタートしました。普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かどうかを考え、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。筆者もこれまではコンビニなどで購入した商品をレジ袋に入れてもらう機会が多かったのですが、これをきっかけにエコバックを携帯するようになり、スプーンやフォーク、ストローなど、ついつい商品購入時にもらいがちなカトラリー類もむやみやたらとはもらわないようになりました。 レジ袋有料化は、プラスチックごみ削減効果などに批判の声もあったりしますが、筆者と同じような意識の変化があった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

商品やサービス利用を起点としたエコ意識の高まり

レジ袋と同様に、私たちの身の回りのプラスチック製品でついつい消費しがちなものとしてビニール傘があげられます。筆者は普段は念のために折り畳み傘を携帯することが多いのですが、折り畳み傘の携帯を忘れ、天気予報に裏切られた際にはしようがなくビニール傘を買ってしまい、気が付いたら家に何本か貯まっているといった状況です。

先日、天気が良く、予報も問題ないことを確認し、最寄り駅まで用事で出かけたところ、用事が済んで帰宅しようとした頃には雨が降っていました。折り畳み傘をバックに入れ忘れていたため、普段であれば駅中のコンビニでついついビニール傘を買ってしまうのですが、この日はある瞬間を目撃しました。一人の男性が傘のシェアリングサービスをまさに利用しようとしている瞬間でした。
最近、傘のシェアリングサービスを駅で目にすることが多くなったのですが、登録が面倒そうという思いから筆者は利用までは至りませんでした。しかし、利用者が簡単そうに使っている姿を見て、実際に使ってみたところ利用者登録なども簡単でとても便利でした。
あまりにも便利だったので、これからも使ってみたいと思い、サービスのホームページを調べたところ、ビニール傘の大量生産・消費・廃棄に問題意識を持っていて、持続可能な地球環境維持のために使い捨て傘を減らすことを目的としているサービスであることが分かりました。
その後も筆者なりにビニール傘の材料の一つであるビニール(プラスチック)の廃棄がどのように環境に影響を与えているかを調べるうちに「海洋プラスチック問題」に行きつきました。
少し飛躍的ですが、一つのサービスの利用が社会課題を意識するきっかけとなりました。

SDGsに限った話ではありませんが、実際に何か行動してみることがきっかけとなり、より深くその問題や課題について知ろうと考える。知ったから更に意識を高めて行動していく。そうして高めた意識に沿ってモノやサービスを購入すれば、より有意義なお金の使い方になるのではないでしょうか。
「やってもしようがない」から「一度やってみよう」へと、意識を変化させることが新たな発見につながるかもしれませんね。

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