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サラリーマンが「会社を買う」という選択肢はあり!?その背景と方法は?

2020/06/19

ふやす

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最近、ネットや書店で「サラリーマンは会社を買う」「個人でM&A」の類の言葉を目にする機会が増えました。最初それを見たとき、筆者はとても衝撃を受けました。「いやいや、いきなり、そんな難しいことはできませんよ」と思ったからなのです。確かに、会社の買収・経営は一般的なサラリーマン(会社員)には難しく、しかも億単位の巨額の資金が必要というイメージが一般的です。 しかし、実は今や、数百万円の資金で個人でも「小さな会社を買う」ことが比較的簡単にできるなど、会社の買収(以下、M&A)は身近な存在になってきています。今回は個人によるM&Aが可能になった背景や実行する際の流れ、必要なスキルなどについて解説していきます。

個人で会社を買うことが可能になった背景は?

個人によるM&Aが可能になった背景は、主に3つあります。

<1つ目>少子高齢化などを背景に、中小企業の後継者不在による「事業承継問題」の深刻化

<2つ目>第三者による事業承継に対する政策的な後押し
*経営者の親族や企業の従業員以外の者による事業承継

<3つ目>個人でもアクセスしやすいM&Aマッチングサイトなどの仲介サービスの普及

■ 中小企業の大量廃業危機を背景とするM&A需要の高まり

経済産業省の試算では、2025年までの10年間で経営者が70歳を超える中小企業・小規模事業者のうち、約半数の127万社が後継者未定だとされています。「後継者不在」が理由で、なかには黒字でも廃業せざるを得ないという問題に直面しているケースが増加しています。
この問題を放置すると中小企業の廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性もあると指摘されています。そのため、事業承継が進まないことが、その企業のみならず、日本経済全体に大きな影響を及ぼすことになります。
この問題に対応すべく、政府も様々な施策で事業承継を促進している今、M&Aによって事業承継の需要が高まっているのです。

■ 第三者による事業承継への政策支援の拡充

後継者不在の中小企業の事業承継を支援するため、政府は2011年に「事業引継ぎ支援センター」を発足し全国47都道府県に設置しました。これらの支援センターを通じて、相談・中間業者や金融機関への取次ぎなどが行われ、発足以来、相談・実行案件が大幅に増加しています。そのほか、法改正によって、税負担の軽減などで第三者による事業承継を後押ししています。

事業引継センターの支援実績

■ インターネットなどを通じたM&Aマッチングサービスの拡大・普及

前述のように、需要の急増と政策的な後押しを背景に、M&A案件は急増しています。それによって、M&A市場は整備され、インターネットのサイト(以下、M&Aマッチングサイト)で売り出し案件の情報が公開され、必要なサービスの提供を受けられるなど、個人にとって簡単に探せる時代となりつつあります。
これらのサイトを利用すれば、自分の「予算」や「希望業種・地域」などに当てはめて売り出し中の会社を検索できます。また、売買交渉の仲介や、契約書の作成、売買成立後のアフターフォローまでサポートしてくれる仲介支援サービスを用意しているサイトもあります。初心者のためのセミナーや説明会の開催も多く、手数料も比較的安いため、初めて会社を購入する方でも利用しやすくなっているのです。

どんな会社を買えるの?

M&Aマッチングサイトに掲載されている会社の規模は様々で、300~500万円程度で購入できるものも多数見受けられます。ここで例を見ていきましょう。

■ 売り出し価格300~500万円が多い業種

業種の例

 飲食店、小売店、美容室などの店舗

 学習塾、スポーツ教室などの小規模教育サービス

 動画・音楽チャネルなどのEC(Eコマース)サイト

 民泊物件などの簡易宿泊施設

 薬局、歯科、内科などの医療関連施設

 不動産仲介業社

 小規模の製造メーカー  など


業種の例

このように、事業者数の多い飲食店や小売業がよく見かけられます。また、薬局や美容室、不動産仲介など資格を必要とする業種も目立ちますが、それらの資格をもっている方には魅力的な案件もあるでしょう。なかには、人件費も設備も多くかかり比較的ランニングコストが高いとされる製造メーカーもありますが、500万円以下で売り出されている理由を見極める必要がありそうです。そのほか、民泊物件やウェブ関係など、業種は多岐にわたります。

いざ、やってみよう。その流れは?

では、実際の個人によるM&Aの流れはどんなものでしょうか。
通常の仲介サービスの利用でもマッチングサイトの利用でも共通していますが、大まかな流れは下記のとおりです。

① 事前準備・・・
予算・業種・地域などを決める。会社の将来のビジョンをもって専門家に相談しても良い。

② ニーズに応じて会社を探す・・・
M&A仲介やマッチングサイトなどを通じて条件に合う会社を探す。

③ 売買交渉・トップ面談・・・
気になった会社の詳細条件を確認し、売買交渉を行う。その際に秘密保持契約の締結も必要。

④ 基本合意・・・
M&Aの基本条件について当事者間で合意を締結したもので、成約に向けて、両社が動くことを約束する契約。

⑤ デューデリジェンス(企業調査)・・・
売り手と買い手の「情報の非対称性」の解消を目的に行うもので、買い手が経営に関して知りたいことを調査。 具体的に、法務、労務、ビジネス面におけるデューデリジェンスがある。

⑥ 最終契約・・・
M&Aの最終条件や細目事項を決定し、最終契約を締結。この段階で売却価格、従業員の処遇、支払い方法、 連帯保証や担保提供の解除方法、契約書に未記載の債務が発生した際の対処などを決める。

⑦ 代金支払い、引継ぎ開始・・・
M&A後の業務に支障をきたすことなく引継ぎを行う。例えば、取引先への挨拶や実務の調整など。

⑧ 自分の会社をもつ・・・
晴れてオーナーになり、会社を盛り上げていく!!

ここでは、一般的な流れを書きましたが、実際に行う際には、支援サービスなどを併用しながら行うことをお勧めします。

会社を持つうえで必要なスキルは?

企業に数十年勤め、管理職にまでなったとはいえ、本当に自分でも会社を買って経営を成り立たせることはできるの?と疑心暗鬼の方が多いはずです。では、具体的にどのようなスキルが求められるのでしょうか。
買収案件の業種は多岐にわたるため、一概には言えませんが、共通して必要とされるスキルについて、筆者は下記のように考えます。

■ しっかりした目的意識・ビジョンのもとでPDCAを徹底できるスキル・・・
自社の未来予想図に向けて、「計画→実行→確認→再度実行」を繰り返して、達成に近づける能力。

■ マーケティングスキル・・・
会社の商品と顧客が一致させることは収益の向上に欠かせないので、身につけておきたいスキル。

■ コミュニケーション・調整能力・・・
会社を経営するうえで、多方面とのかかわりをもつもので、コミュニケーション能力が高いと物事がスムーズに運ぶことにつながっていく。

■ 前向きの心持ち・・・
会社経営は初めてのことや困難なことの連続かもしれないが、くじけずそれらを乗り越えられるような心持ちが必要。

■ 最低限の会計知識・・・
税理士に任せられる部分もあるが、経営者となった以上、自社の経営状況を把握することは大事なスキル。

■ マネジメントスキル・・・
従業員がどれだけ貢献してくれるのかは会社生命を左右する大きなポイント。「適材適所でマネジメントするスキル」+「心を動かすハート」で従業員との一体化をはかることが大切。

一見、難しく見えるかもしれませんが、サラリーマン、特に管理職にまでなった方にとっては日々気を付けながら行っているスキルだと思います。例えば、今までは「自分は会社の歯車に過ぎない」いう見方をしてきたとしても、自分の所属部署が1つの会社になったと考えれば、その先に見えてくるものがあると思います。ですので、実はサラリーマンの方でも極端に難しいというわけではなく、普段から少しでも経営者の視点を意識することで上達するスキルだと考えます。

人生100年時代に、「会社を買う」という選択肢はあり?

昨今の老後2000万円問題は、現役世代にも大きな衝撃を与えました。また、経団連会長が2019年4月に終身雇用制の見直しや新卒通年採用の拡大に言及したように、従来のような終身雇用や年功序列といった雇用形態にも変化が起こっています。
このように、年金や雇用への不安、景気の先行きの不透明さが増すなか、「人生100年時代」となったいま、サラリーマンの方々にとっての「真のリタイア」までの道のりは長くなったと言えそうです。
本業とは別にずっとやりたかったことや叶えたかった夢は、自分の会社を経営することで実現できるかもしれません。その手段の1つとして、個人M&Aで「会社を買う」を考えてみてはいかがでしょう。
もちろん、数百万円という金額も大金ですが、例えば退職金の運用方法の一つとして考えれば絶対に手が出せないというほどではありません。役員報酬を得ることに加え、必要な出費を経費として計上できるなど経済的なメリットがあると同時に、今までの経験や能力を活かせ、「生涯現役」で人生を輝かせることができるかもしれません。

最後に

会社の経営は投資と同様にリスクが伴うことです。しかし、先行き不透明の環境のなかでは、「何もしない」ということも1つのリスクです。会社を経営していくことは、リスクを負いながらも楽しみやメリットがついてくるといえるでしょう。そして、その行動は、日本中の多くの中小企業を救い、日本経済に貢献することにもつながります。

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