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「トランジション・ファイナンス」とは?~脱炭素社会の実現に向けた第一歩~

2022/03/11

知恵のハコ

「SDGs」や「サステナビリティ」、「持続可能な社会」など、最近ニュースやテレビでもよく取り上げられており、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?それは昨今、将来の私たちや次世代の人々が変わらず、安心して豊かな暮らしを続けられるように、自然環境や人が生きていく社会を持続可能なものにしなければならないという問題意識が世界中で高まっているからです。

2021年10月31日~11月13日に英国で開かれた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で、日本は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量・除去量を均衡させること)を実現すると発表し、自然環境に配慮した持続可能な社会を目指すと表明しました。今回はカーボンニュートラル実現のための事業活動を資金面で支援する仕組みの1つである「トランジション・ファイナンス」をご紹介します。

トランジション・ファイナンスとは?

トランジション・ファイナンスを日本語訳すると、「トランジション=移行」、「ファイナンス=資金調達」を意味します。「移行」のための資金調達とは一体何なのでしょうか?脱炭素社会を実現すると言っても、全ての企業が直ちに二酸化炭素の排出量を減らすことが出来るわけではありません。トランジション・ファイナンスとは、環境負荷の高い事業活動を、環境負荷の低い形に移行させるために必要な資金調達を実施することなのです。現在、トランジション・ファイナンスの対象となっている産業は、「電力」、「ガス」、「石油」、「鉄鋼」、「セメント」、「化学」、「紙・パルプ」の7分野です。

【脱炭素社会に向けた移行のイメージ】

脱炭素社会に向けた移行のイメージ

出所:経済産業省のHPよりアセットマネジメントOne作成

脱炭素に向けた企業の取り組み

では、実際に各業界でトランジション・ファイナンスに取り組んでいる企業は、どのような目標を掲げ、何に使うために資金調達を行っているのでしょうか?ここでは2つの企業の事例をご紹介します。

◇日本郵船

日本郵船は日本で有数の海運会社です。同社は2050年までに排出するCO2を50%削減することを目標にしています。その実現のために、LNG(液化天然ガス)やアンモニア・水素といった環境負荷の低い燃料の船舶への切り替え・開発等に着手しています。2021年には日本初のトランジションボンドを発行し、資金調達を実施しています。

◇日本航空

日本航空は言わずと知れた日本を代表する航空会社で、2050年までにCO2排出量をゼロにすることを目標にしています。その実現のために、省燃費性能が高い機材への転換や運航効率を高めるシステム開発、代替燃料の開発等を手掛けています。2022年には業界初のトランジションボンドを発行し、資金調達を実施しています。

【日本郵船と日本航空の脱炭素に向けた目標と主な手段】

 日本郵船日本航空
目標 ・2030年までにCO2排出量を30%削減
・2050年までにCO2排出量を50%削減
・2030年までにCO2排出量を10%削減
・2050年までにCO2排出量を100%削減
主な手段 ①LNG(液化天然ガス)燃料とした船舶への転換
②アンモニア・水素を燃料とした船舶の開発
③燃料消費削減のための運航面の改善
 (軽量化、安定性・推進効率の向上など)
④更なるCO2排出削減が可能な技術の調査
①省燃費性能が高い機材(A350/787等)への転換
②航空機の電動化・水素化に向けた技術開発
③運航効率向上のための官民共同でのシステム開発
④代替航空燃料の開発と供給網の構築

※上記はトランジションファイナンスで調達した資金使途を記したものではなく、各企業の脱炭素のための取り組みを抜粋したものです。

※上記は個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

出所:各企業のHPよりアセットマネジメントOne作成

持続可能(サステナブル)な社会の実現に向けて

石炭火力発電への依存度が高い日本は、カーボンニュートラルに向けた取り組みにおいて、他国に遅れをとっていると言われています。脱炭素社会を目指すことは決して簡単なことではなく、様々な業界が協力しながら推進することが重要になります。その中でも、ここでご紹介したトランジション・ファイナンスは、脱炭素化に向けた取り組みを推進していくうえで必要不可欠です。足元では様々な業界でこの資金調達手法が検討されており、トランジション・ファイナンスという手法が浸透していくことで、企業の脱炭素化や低炭素化への取り組みが進み、カーボンニュートラルの実現に向かっていくと考えます。

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