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広がるクロステックビジネス ~様々な領域に活用されるIT~

2020/02/12

知恵のハコ

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「〇〇テック」、最近様々な領域で「テック(Tech)*1」のフレーズを耳にするようになりました。 テクノロジーを活用した先進的な事業やサービスに注目が集まる昨今、日本政府が提唱する未来社会のコンセプト「Society(ソサエティ)5.0*2」の流れを受け、新しい価値やサービスが次々と登場しています。今回は、世の中に広がるテック領域について探っていきます。

*1 テクノロジー(Technology)の略

*2 IoT (Internet of Things) や人工知能 (AI) などを使い、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会 (Society) を目指す、未来社会の姿として提唱されたもの。狩猟社会 (Society 1.0)、農耕社会 (Society 2.0)、工業社会 (Society 3.0)、情報社会 (Society 4.0) といった人類がこれまで歩んできた社会に次ぐ第5の新たな社会を、デジタル革新、イノベーションを最大限活用して実現するという意味で「Society5.0」と名付けられた。

経済成長をけん引する「情報通信産業」

総務省が令和元年に発表した「情報通信白書」によると、2017年の情報通信産業の実質国内生産額(2011年価格で実質化したもの)は99.8兆円と、全産業の約10%を占める最大の産業となっています。

主な産業の実質国内生産額(2017年)

また、2007から2017年の10年間における実質GDP成長率を産業別にみると、「情報通信産業」(14.3%)は「医療・福祉」(25.2%)につぐ高い成長率となっています。
「情報通信産業」の名目GDP成長率を部門別にみると、情報通信関連製造業や同建設業等が減少傾向にある一方で、インターネット附随サービス業が圧倒的に増加していることがわかります。

主な産業別実質GDPの推移

除法通信産業の部門別名目GDPの推移

このように、情報通信に関連した機器の市場以上に、インターネットに附随したコンテンツの市場が拡大している中、テック領域にはどのようなものがあるのか、注目の領域についてみていきましょう。

アイコン1 FinTech(フィンテック) Finance×Technology

金融と情報・通信技術を組み合わせた、従来にない新しい金融サービスやシステムなどをいいます。
フィンテックというと、何か最新のテクノロジーで、一部の人たちだけが利用しているというイメージがあるかもしれませんが、私たちはすでに普段の生活の中でフィンテックを利用しています。例えば最近急速に広まってきたキャッシュレス決済。これも立派なフィンテックです。2017年に政府が出した「未来投資戦略2017」の中にある「キャッシュレス決済比率を今後10年で4割程度までに向上させる(2017年時点21%)」という目標もあり、近年様々な企業がキャッシュレス決済サービスを提供しています。昨年10月の消費税増税に伴い、「キャッシュレス・ポイント還元事業」の開始(実施期間は2020年6月末まで)や、決済サービス独自のポイント還元サービスもあり、今後も利用者の拡大が想定されます。
身近な決済サービスだけでなく、融資・送金・資産運用・家計管理などの分野に特化した金融サービスを提供する企業も誕生しています。そのような中、銀行や証券といった業態ごとに定められている金融・商取引関連法制を見直すことが進められており、金融サービスのあり方にも影響を与えることが予想され、注目を集めています。

アイコン1 SalesTech(セールステック) Sales×Technology

IT技術を用いることで営業活動を効率的に行う動きが広まっています。
代表的なものでは、CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理システム)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)などの活用が挙げられます。
CRMは、顧客の購入・利用履歴だけでなく、苦情や意見なども含めたあらゆる情報を紐づけることで、効果的なマーケティング活動を行うことができるシステムです。顧客に応じた丁寧なフォローにつなげることで、顧客満足度の向上やリピーターの獲得にも効果的とされています。また、顧客分析によって更なる購買行動の予測も期待できます。
オンラインショッピングサイトなどで、商品を検索すると、「一緒に見られている・購入されている商品」や、「類似商品と比較する」など、関連情報がポップアップされたりしますが、これもCRMを活用した代表的な営業手法の一つです。
SFAは、フィールドセールス(外勤営業)を支援するツールや、営業の進捗や売上などの、営業活動を管理することで、情報技術を活用した生産性の高い営業を目指すシステムです。これまで経験や勘に基づいて行われていた営業活動を分析し可視化することで、営業の効率化、プロセスの改善、そして結果の向上などが期待でき、人材育成にも効果的とされています。外訪から戻って、営業日誌を書く時代から、活動報告が簡単な入力で済み、手間のかかる報告業務を大幅削減する時代になったことで、本来やるべき営業活動に集中できるというわけです。

アイコン3 AgriTech(アグリテック) Agriculture×Technology

現在、日本の農家は減少傾向にあり、働き手の高齢化が問題となっています。
農林水産省の統計によると、総農家数は平成12年の312.0万戸に対し、平成27年は215.5万戸と約100万戸減少しています。農業従事者の平均年齢も平成12年の62.2歳に対し、平成27年は67.0歳と高齢化が進んでおり、今後もこの傾向は強まると予想されています。
農林水産省は平成25年より「スマート農業」の実現に向けた取り組みを研究・実施しており、「農業の効率化」と「農業技術のノウハウを分析・可視化」を軸にアグリテックを推進し、行政と民間企業が連携し研究を進めています。
例えば、収穫作業は熟練の判断が必要となりますが、すでに機械学習により収穫に最適なタイミングを見極めるロボットが開発されています。ケンブリッジ大学ではレタス、スペインの企業ではいちごの自動収穫を行うロボットが開発されており、作業効率と人手不足の解消が期待されています。他にも、ドローンによる自動植林、パワーアシストスーツによる軽労働化等様々な技術が実用化されはじめています。
これからますます発展していくであろうアグリテック。コスト面の持続可能性が課題となりますが、今後の動向が注目されます。

アイコン4 AdTech(アドテック) Advertisement×Technology

みなさまがインターネットを使っている時、閲覧中のページに表示される広告が、直近で検索したモノ・コトに関連したものであることにお気づきでしょうか。これはディスプレイ広告といって、検索結果に連動して表示される広告です。ユーザーが検索している関心の高いものが広告として表示されるため、一般的な不特定多数を対象とする広告と違い、効率的な広告が可能です。また、リスティング広告といってGoogleやYahooで検索した際の検索結果ページで優先的に上位に表示されるテキスト広告もあります。広告主が設定したキーワードで検索が行われた時にだけ表示されるもので、ディスプレイ広告よりもさらにターゲットを絞って配信でき、実際に検索を行っているユーザー(顕在層のユーザー)にアプローチできる広告といえます。
また、街中や電車内の広告にも変化が表れています。最近目にするのは「デジタルサイネージ=電子看板」。紙の広告に比べ、表示内容を秒単位で切り替えたり、動画表示を行うなど、多様な映像広告を表示できます。駅ナカの柱などに複数のデジタルサイネージを設置し、電車がホームに侵入するタイミングに広告をリンクさせたり、電車内の複数のモニターを使って一つの広告を表示させたり、と新しいビジュアルで目を惹く広告が増えてきています。

アイコン5 EdTech(エドテック) Education×Technology

デジタル技術を活用した新しい教育のかたちを提供するビジネス領域として、さまざまな広がりをみせています。
政府が打ち出している「新しい学び」の推進には、2023年までに子供一人につき端末(タブレットPC等)1台の配布などが盛り込まれました。学習指導要領も約10年ぶりに改訂され、2020年度より新しいカリキュラムが小学校から順に実施*されます。小学校中学年から「外国語教育」を導入、小学校における「プログラミング教育」を必修化するなど、学校での学びを通じて子供たちが社会の変化を見据えた「生きる力」を育むための新たな学びへの進化をねらいとしたカリキュラムとなっています。筆者の子供の周囲でも、この改定を見込んで習い事としてロボットプログラミングに通わせているご家庭が増えてきています。
こうした変化の後押しもあり、エドテック関連サービスがますます注目を集めています。 今や、多くの受験生が学習管理にスマホアプリを利用しています。学習記録や勉強量の可視化、参考書や教材の管理に加えて、中にはSNS機能がついているものもあり、SNS参加者からなる参考書レビューを閲覧したり、学習記録を共有しモチベーションを高めることなどに役立てています。
また、授業動画配信サービスでは、小学生から社会人まで幅広いターゲットに向けたサービスが続々誕生しています。一流講師による映像授業とそれに沿ったテキストを用いた新たな学習コンテンツが注目を集めています。情報通信技術を用いた教育(ICT教育)を推進する公立小学校などでも導入されており、学力調査結果では学力の向上がみられているようです。
他にも、オンライン・オフラインで先生同士がつながる教師向けSNSや、ライブ動画配信を活用した多彩なコンテンツや大学単位取得可能プログラムの配信サービスなど、エドテックは今後も発展していくことが予想され、学びのかたちにも更なる変化が現れることが見込まれます。

*中学校は2021年度、高等学校は2022年度から順次実施。

アイコン6 MedTech(メドテック) Medical×Technology

高齢化が進み医療や介護サービスの高度化・効率化へのニーズが高まるなか、メドテック分野には医療関連企業にとどまらず、電機・通信大手企業などが新規参入し、取り組みを強化しています。
パナソニックと国立循環器病研究センターは共同で、高齢者の日常生活を、サービス付き高齢者向け住宅に設置したセンサーで観察。行動の分析から、認知症を発症する兆候を研究し、認知機能の評価システムやサービスの開発などを目指しています。
NTTドコモも医療分野と技術連携を進めており、鮮明な画像など大容量のデータを超高速で送ることができる5Gを利用し、都市部と地方の医療格差の問題を解決する、遠隔診療の高度化の支援に取り組んでいます。
他にも、再生細胞薬の実用化や手術支援ロボットなど、メドテックの発展は、今後の医療分野に大きな変化をもたらすと期待されています。

以上、 クロステックビジネスの代表的なものをご紹介しました。あらゆる分野がテック領域に深く関わっており、これまでになかったビジネスも登場するなど、まさに著しい成長を果たしています。今後、社会の変化とともに、ビジネスにも革新をもたらす「情報通信産業」には期待も大きく、無視することができない存在です。将来を見据えて「情報通信産業」への投資を考えてみても良いかもしれませんね。

※掲載した企業名は、個別銘柄の推奨を目的としたものではありません。

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