わらしべ瓦版わらしべ瓦版

おカネの健康を考えるウェブマガジン

アセットマネジメントOne

今さら聞けない「ギリシャ危機」って何だっけ?

2019/08/20

知恵のハコ

わが国でも消費税率の10%への引き上げが近づいていると言われています。引き上げの目的として社会保障や福祉の財源確保が挙げられていますが、これに関連して想起されるのが2009年10月頃から問題となった「ギリシャ危機」で、もうすぐ丸10年になろうとしています。今回はこの出来事を振り返るとともに、ギリシャの現在がどのようになっているか確認してみたいと思います。

ギリシャ危機の始まり

当時のギリシャでは、公務員の数が労働人口の4分の1もの割合を占めている状況でした。また年金制度についても、55歳頃からの早期受給が可能であったり、所得代替率(リタイア前の給与に対する割合)が90%を超えているなど、かなり恵まれた仕組みになっていました。(所得代替率についてはドイツの約2倍、わが国の約3倍にも相当します。)こうした事情が危機の下地となっていました。

事の発端は、2009年10月の新民主主義党(穏健派・中道右派)から全ギリシャ社会主義運動(左派)への政権交代でした。これを機に、旧政権により財政赤字が隠蔽されていたことが明らかになったのです(財政赤字がGDP比で5%程度とされていたが、実際は12.7%であったと判明。更にその後13.6%に修正)。このため新政権(パパンドレウ氏)から財政健全化計画が発表されたのですが、経済成長率などの点において楽観的な内容だったため、ギリシャ国債が格下げされることとなりました。同時に、同国への融資額が大きいドイツ国債の価格や通貨ユーロが下落し、ギリシャと同じように財政赤字の大きいイタリアやスペインなどの南欧諸国の国債価格も下落しました。当時、財政に不安のあるこれらの国の頭文字を取ってPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)という言葉も話題になりました。これに対しIMF(国際通貨基金)やEU(欧州連合)は金融支援を決定したものの、その条件としてギリシャに増税・年金改革・公務員改革・公共投資削減・公益事業民営化など、厳しい緊縮財政・構造改革を求めました。

ギリシャ(イメージ)

危機後のギリシャ社会

ギリシャはこの条件を受け入れ、財政健全化を進めましたが国民負担も大きく、景気も大きく落ち込む結果となりました。法案の議会通過に際しては、大規模なデモや暴動が頻発するなど、その過程は簡単なものではありませんでしたが、各国の協力もありギリシャは危機を乗り越え、2014年にはパパデモス政権のもと実質GDP成長率もプラスに転じました。しかしながら国民は負担増に耐えられなくなっており、2015年の総選挙において急進左派連合(SYRIZA)のチプラス氏が政権を奪取しました。同政権はポピュリスト政党、すなわち一般大衆の支持のもと体制側や知識人に批判的な政党であり、反緊縮や既存政治の刷新を訴え、民意を得ました。しかし同政権も早々にEUとの交渉に行き詰まったため、公約に反し年金カットや増税などの緊縮財政を実施しました。この結果、2018年8月、全ての金融支援プログラムを終了させましたが代償は大きく、同政権は国民の支持を失い、2019年7月、総選挙により新民主主義党が勝利し、約4年半ぶりに政権交代が実現しました。

ギリシャの実質GDP成長率

出所: IMF“World Economic Outlook Database, April 2019”のデータをもとにアセットマネジメントOne作成

日本の財政は大丈夫?

日本の消費税増税については、2013年の安倍首相の閣議決定や2014年の8%への引き上げ実施など、正当な手続きを経てはいます。ただしその根幹には、ギリシャ危機発生時やその後の世界的な金融不安の際に、日本でも日本の財政赤字の規模や国債の格付けの健全性などが取りざたされたこともあり、「消費税を引き上げないとギリシャの様になる」といった危機感を背景とした「消費税増税ありき」が前提条件となり、現在に至っている印象です。ギリシャ危機発生時の日本の与党は民主党であり、当時は「事業仕分け」に伴うコスト削減や「埋蔵金」の発掘といったワードが話題になりましたが、昨今ではコスト削減についての議論があまりなされなくなってきた点は個人的には残念に思っています。

ギリシャ(イメージ)日本でも消費税増税や年金受給年齢の引き上げなどの財政収支改善策は図られてはいます。ただ消費税率の引き上げ余地は当然ながら小さくなることに加え、医療費負担や年金財政については着実に悪化し続けることが予想されます。「ギリシャ危機」で何が起こり、何が懸念されていたかを忘れることなく、「日本財政危機」が発生しないよう、政治家の言動などを監視し、健全な財政維持に向けサポートしていくことが重要かと思われます。

ちなみに2019年7月31日現在のギリシャ10年国債利回りは2.05%程度となっており、2012年に30%を超えていた水準からは大きく低下しています。当時にギリシャ国債に投資していれば、驚異的なパフォーマンスを得られていたことになります。ギリシャ(イメージ)

■過去の危機をもっと知りたい方に

わらしべ瓦版を
Facebookでフォローする

わらしべ瓦版をFacebookでフォローする