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なぜ、LIBORは廃止になったの?代替金利指標はどうなる?

2022/03/25

知恵のハコ

2021年3月5日、LIBOR運営機関であるIBA(ICE Benchmark Administration)は、国際的金利指標であるロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate, 以下、「LIBOR」といいます。)に関して、米ドルの一部テナー(期間)を除き、2021年12月末をもってLIBORの公表を恒久的に停止することを発表しました。 本記事では、「LIBOR」の役割と廃止となった背景、そして代替金利指標などの現状について解説します。

LIBORとは

LIBORとは、ロンドン市場での⾦融取引における銀⾏間取引⾦利のことです。主要な5通貨(日本円・英ポンド・スイスフラン・ユーロ・米ドル)について公表され、ロンドンのインターバンク市場において世界の主要銀行(パネル行:レート呈示銀行)が無担保で短期資金を調達する際の金利(無担保貸出金利)を平均して算出される指標金利でした。LIBORは、金融機関のみならず、機関投資家や事業法人などの金融市場参加者により、金利スワップをはじめとしたデリバティブ取引、債券、ローンなどの参照金利として長年にわたり利用されてきました。

仕組としては、各パネル行から報告された毎営業日11:00時点のレートをかつては英国銀行協会(BBA)が集計・発表していましたが、2012年の不正操作事件をきっかけにBBAからインターコンチネンタル取引所(ICE)に集計・発表等の運営が移管され、「ICE LIBOR」として公表されていました。

ちなみに、東京市場における銀行間取引金利はTIBOR(Tokyo Interbank Offered Rateの頭文字を組み合わせた略称)といい、全国銀行協会TIBOR運営機関が、各パネル行から呈示されたレートを集計し、毎営業日に公表していました。

LIBORとは

LIBOR廃止の理由とは

それでは、国際的な金利指標であるLIBORがなぜ公表廃止となったのでしょうか。

きっかけは、LIBOR算出の基礎となる銀行間の無担保短期資金貸借市場の実取引高が著しく減少し、世界の主要銀行の資金調達コストの実態を反映していないことが問題となっていた中、2012年に欧米のパネル行による不正操作が発覚したことです。これを受けてLIBORの信用性は大きく低下し、2017年7月には英国FCA(金融行為規制機構)のベイリー長官(当時)が、

① LIBORを算出する際の基礎となる銀行間の無担保短期資金貸借市場の取引が⼗分に活発でないこと

② LIBORの算出基礎となるレートを呈⽰するパネル⾏が、⼗分な取引の裏付けがないレートの呈⽰を継続することに不安を覚えていること

を理由として、2021年末をもってLIBOR算出に使用するためのレート呈示をパネル行に強制しない事を発表しました。

<LIBOR公表廃止のスケジュール>

通貨テナー(期間)停止時期
日本円 全期間 2021年12月末以降
英ポンド
ユーロ
スイスフラン
米ドル 1週間物、2ヵ月物 2021年12月末以降
翌月物、1ヵ月物、3ヵ月物
6ヵ月物、12ヵ月物
2023年6月末以降

出所:金融庁の資料をもとにアセットマネジメントOne作成

このような状況を鑑み、FCAおよびLIBOR運営機関であるIBAにおける協議、検討が行われた結果、LIBORの公表が停止されることになりました。

LIBOR廃止に向けた各国の動き

金融安定理事会(FSB)が、2014年7月に公表した「主要な金利指標の改革」と題する報告書の提言にもとづき、各国において既存の金利指標である銀行間取引金利(IBORs)の信頼性・頑健性の向上を図る取組みが進められました。既存の金利指標であるIBORsの信頼性低下に伴い、IBORsの改革とともに、代替指標となる銀行の信用リスクなどを反映しないリスク・フリー・レート(RFR)の特定が行われ、日本をはじめとした複数の国においては、金利指標を金融商品や取引の性質を踏まえて利用していくことについて検討が行われてきました。

日本においては、2018年8月に日本銀行を事務局とする「日本円金利指標に関する検討委員会」が設立され、2020年11月末に公表された第2回取りまとめ報告書において、円LIBORを参照するキャッシュ商品(貸出、債券等)における具体的な取扱いに関する推奨内容等の実務的な論点のほか、2021年末以降に満期を迎える円LIBORを参照するキャッシュ商品について、対応の目安となる時期等を定めた移行計画が取りまとめられました。

影響は金融機関のみだったのか?

LIBORは、貸出・債券・デリバティブといった商品における参照金利としてだけではなく、会計(ヘッジ会計等)、事務・システム(資金決済等)、インフラ(取引所(上場商品))、内部ガバナンス(リスク管理等)など、様々な制度・慣行等で利用が前提とされてきました。また、LIBORを直接参照していなくとも、円LIBORベースの東京スワップ・レート(LIBOR TSR)のように関連する指標も複数存在していたことから、これらを参照している商品にも影響が生じました。つまり、融資などの金利やデリバティブ取引における金銭の支払い額の算出ができなくなる恐れがあったのです。

このようにLIBORは様々な枠組みで相互依存関係にあったため、その恒久的な公表停止による影響は大きく、金融機関だけではなく、事業法人においても必要な対応が行われました。

影響は金融機関のみだったのか?

LIBOR廃止後の代替金利指標は?

日本円におけるRFRは、「無担保コールオーバーナイト(O/N)物レート」(TONA)と特定されていますが、RFRは金融機関が資金を調達する際の金融機関の信用リスクをほぼ含まない金利として、通貨ごとに特定されています。日本円におけるRFRであるTONAは、銀行の信用リスクを含まないほか、翌日物である(3ヵ月・6ヵ月物などの期間構造を有していない)という特徴があり、この点で、銀行の信用リスクを含み、かつ期間構造を有しているLIBORとは異なります。

一方、円LIBOR3ヵ物などのように一定期間の金利の代替金利指標としては、株式会社QUICKベンチマークスが日本円の翌日物金利スワップ(OIS)取引の市場データをもとにターム物RFR金利として「東京ターム物リスク・フリー・レート」(略称「TORF」(トーフ))を算出・公表しており、金利の適用開始時点で前もって適用金利が確定する「前決め」方式が特徴となっています(タームは、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月)。

以上のことを受け、金利が前決めであり、既存の事務・システムとの親和性が高いとして、多くの機関はTORFを代替金利指標として採用しています。なお、以前LIBORで課題となった裏付けとなるOIS取引の流動性の向上が今後重要となると考えられています。

出所:金融庁、日本銀行などの資料をもとにアセットマネジメントOne作成

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