たわらを学ぶ

「ヘッジあり」「ヘッジなし」ってなに?

投資信託の名前を眺めていると、名前の中に<為替ヘッジあり><為替ヘッジなし>といった表記を見かけることがありませんか?為替ヘッジあり/なし、とはどういう意味なのでしょうか。為替ヘッジとは、為替の取引を行って為替の影響を軽減しようとすることをいいます。

では、為替の影響とはどのようなものでしょうか。例えば、米国株に投資することをイメージしてみましょう。米国株には米ドルで値段がついていますから、米国株に日本円で投資をするには、日本円をまず米ドルに換えて、その米ドルで米国株を買う、という為替取引のひと手間が必要となります。換金のときも同じです。保有している米国株を売却すると、受け取る代金は米ドルです。この米ドルを日本円に換えて初めて投資成果が確定すると言えます。つまり、日本円で米国株に投資をする場合には、米国株自体の値段の変動と共に、日本円⇔米ドルの為替相場の変動の影響も受けることになるのです。為替の影響を受ける場合、投資した時よりも米ドル高・日本円安が進行すれば、投資家は為替部分で儲かることになります。一方で、為替部分で損をする可能性もあり、せっかく保有する米国株価が上昇しても、為替による損がそれを打ち消してしまうかもしれません。

このように、為替変動による損益を投資成果として享受したい投資家がいる一方で、為替変動の影響を受けることなく、米国株であれば投資対象の米国株そのものの値動きだけを投資成果として得たい、と考える投資家もいます。そのような投資家にぴったりなのが、「為替ヘッジ」という手法です。為替ヘッジでは、「為替予約取引」という手法が通常用いられます。その名の通り、将来の為替レートをあらかじめ決めて(予約して)しまう方法です。為替ヘッジを使えば、思わぬ為替変動にさらされないようにコントロールできます。

現状、円からドルに投資するときに為替ヘッジを行う場合、コストがかかります。ヘッジコストは、「いくら」という風に決まっているものではなく、また投資家が好きに決められるものでもありません。対象通貨間の短期金利水準の差が大きな要因となります。なぜ金利差の影響を強く受けるのでしょうか?それは、為替を取引する二者がそれぞれ有利・不利を被らないようにするためです。
たとえば日本人Aさんと米国人Bさんの取引で考えてみましょう。

<AさんBさん取引図①>

現在、為替が1米ドル=100円、円の金利が1%、米ドルの金利が3%だとします。Aさんは今持っている日本円を米ドルに交換し、1年後に米ドルを日本円に戻したいと考えています。Bさんは全く逆で、今持っている米ドルを日本円に交換し、1年後に日本円を米ドルに戻したいと考えています。

<AさんBさん取引図②>

今、単純にAさんとBさんが100円と1米ドルを交換すると、1年後には、Aさんが手にした1米ドルは1.03ドルに、Bさんが手にした100円は101円になると想定されます。1.03米ドル=101円、つまり、1米ドル=約98円になります。金利水準が高い米ドルの方が、増え方が大きいので、もし1年後の為替レートが1米ドル=100円のままであれば米ドルに投資していたAさんのほうが有利になってしまいます。

<AさんBさん取引図③>

もし、AさんとBさんがあらかじめ1年後の為替リスクをヘッジするならば、いくらで交換することを約束すればいいでしょうか? 正解は、1年後の世界の為替レートがどうなっているかにかかわらず、Aさん・Bさん間では1米ドル=98円で取引する、と決めてしまうのです。そうすると、1年後に得られるリターンは、Aさんは円を保有していた時、Bさんは米ドルを保有していた時(つまり、為替取引せずに1年間過ごした状態)と同じになります。

為替の影響を受けたくないから<為替ヘッジあり>に投資する、という選択はもちろん、相場状況に応じて<為替ヘッジあり><為替ヘッジなし>をうまく使い分けてみてはいかがでしょうか。